2023年12月26日火曜日

米軍普天間基地移転問題

 宜野湾市の米軍普天間基地の名護市辺野古への移転をめぐる沖縄県と日本政府の対立は最終局面に至ったようだ。26年前、発展の遅れた県北部の振興をめざす比嘉鉄也名護市長の苦渋の決断で基地移転が決まり、市長との会談で橋本首相は涙ながらに感謝したと聞く。 むろん沖縄県全体では県内移転に強い不満があったが。

 その後の26年間に沖縄の世論の強い反対と同時に海面埋め立ての困難がクローズアップされた。現在の予想では7万本の杭が必要で、工事に12年必要とのこと(それさえ確実ではない)。その上、2本の滑走路はどちらも全長1800メートルで、普天間基地の2700メートルの代替物となるのか疑わしい。さらにミサイルの絶え間ない進歩で基地の後方移転の動きまであるとも聞く。

 ここまで状況が変化した以上、もはや辺野古移転は断念すべきではなかろうか。普天間基地には騒音や危険があるとはいえ、それが耐え難い市民には国が新築移転の全費用を負担するのである。12年後でも辺野古移転が可能かは確かでない以上、もはや決断の時ではなかろうか。

2023年12月22日金曜日

「皇室の危機」を作った安倍首相

 今朝の毎日新聞は一つ一つは短いが、3ページにわたって「皇室 深まる危機」との記事を載せている。きっかけは最近大衆週刊誌で秋篠宮の住居の改築工事が広大でゼイタクだと批判されている報道のようだ。批判に対して秋篠宮は広いのは公的スペースが多いためであり、佳子様の部屋が無いのはどうせいつかは家を出るから不要になるとの理由を挙げられる。 立派な反論になっている。

 最近の大衆週刊誌の秋篠宮関係の取り上げ方は、題名から判断する限り民間人なら名誉毀損に該当するのではないかと思うほどに下品であり、改築内容の説明が必要と秋篠宮に感じさせたとは宮に同情したくなる。しかし、『毎日』の危惧は天皇家の「進む高齢化」である。私見ではそれを一挙に解決できるのは女性天皇の誕生である。愛子さんの人格や能力が天皇にふさはしくないとは誰も思うまい。

 平成天皇ご退位直後には皇室典範の改正には女性天皇創設も審議の対象と考えられていた筈。それが変化したのは秋篠宮家での男子誕生である。しかし、男子誕生なら問題がすべて解決ということでは無かった筈。それなのに皇室典範の改正論議が進まなかったのは、延期による論議の自然消滅を狙った安倍氏の策略では無かったか。その結果、「皇室の危機」が生まれたのだから安倍前首相の責任は重大ではなかろうか。

2023年12月13日水曜日

オーバーツーリズムの功罪

 コロナ禍で一時沈静化していた外国人の日本観光熱が復活し、観光地はどこも潤って喜んでいると思いきや、「過ぎたるは及ばざるが如し」で京都など迷惑しているとは聞いていた。今朝の朝日新聞の「声」欄に京都と共に信州馬籠、箱根、秋田、瀬戸内からの地元住民の困惑の声が寄せられている(京都は悲鳴!)。黒田前総裁のもと、日銀が採った低金利政策による円安の影響も大きいが、それだけなら今後の円高誘導で沈静化するだろうが、もっと本質的な日本の風土や文化への憧れが外国人を呼び寄せているとすれば、痛し痒しである。

 その外人観光客の人気ナンバーワンの京都が日米戦争の末期に米空軍の爆撃目標だったことは知られており、それを阻止するため尽力したのは米国の美術史家のラングドン・ウォーナーと当初は伝えられた。米国では早く異論が出たようだが、我が国ではライシャワー大使の回想録『ライシャワー自伝』(1987)が、それは誤りであり日本文化を愛し京都を二度お訪れていたスチムソン陸軍長官が恩人だと知らせた。いずれにせよ、戦争がいかに人の心を狂わせるか痛感させられる。現在のオーバーツーリズムが各地に困難を生んでいることは困ったことだが、日本文化がそれにより広く世界に知られることの利点ははかり知れない。

2023年12月10日日曜日

ガザの真実はどちら?

   発売されたばかりの月刊『文藝春秋』の新年特大号に佐藤優と池上彰の対談「ハマスとイスラエル 悪魔はどちらか」が載っており、さっそく図書館で読んだ(多摩市の読者第一号?)。 最初に池上が、共著もある佐藤優とはこれまで共鳴するテーマが多かったが、今回はそうでもないと読者に予防線を張っていた。しかし内容はそうでも無かった

 池上はまず、イスラエル側は自国民の犠牲者数を最初は1400人と発表し、ついで1200人と訂正した(だから信用できるといいたい?)のに対し、 その十倍ほどのガザ側の犠牲者数は「ガザ保険省の発表」ではなく、「ハマスの発表」だと読者に注意する(だからそのまま信用はできないとでも?)。

 また、池上がハマスの幹部はカタールで「セレブ生活」をおくるといえば佐藤優がその子供はインターナショナル・スクールに通学すると応ずる。さらに池上は「今のハマス幹部はかなり腐敗し」「恐怖政治をおこなっている」とまで語る(初期のハマス幹部は清廉だったとも強調)。他方、イスラエルの「内在的論理」を追求するとの佐藤は逆に「1997年のネタニヤフ」と「2023年のネタニヤフ」は「同一人物とはとても思えません」とイスラエル首相の変貌を指摘する。しかし、「近隣のイスラム諸国でスンニ派のハマスを支持しているのはシーア派のイランだけ」。「ハマス掃討はイラン以外は皆賛成」と断言する。

 以上、細かい事実など私には判断できない。しかし「日本の報道の多くは情緒的すぎ」との佐藤の指摘は私も全く同感である。他方、イスラム研究者の飯山陽に親アラブと批判された(『イスラム教再考』扶桑新書 2021) 池上もハマスは別だと言いたいのだろうか?

  1930年代にフランス最初のユダヤ人の首相となったレオン・ブルムは「キリストは隣人愛を説いたが、エホバは正義を望んだ」と語った(エホバ=ヤーヴェは旧約聖書の神)。ユダヤ人もアラブ人も砂漠の神の峻烈さを分かち持つということなのか。

 

2023年12月7日木曜日

政治家の評価

  毎年のことで今年だけではないが、脊梁山脈を挟んでわが国の太平洋側と日本海側の気候の違い、その不公平さには心が痛む。今年も太平洋側は好天続きだったのに(農業などには良い事ばかりではないが)、日本海側は災害をもたらす天候不順の日が少なく無かった。これからの冬にはその不公平は極大化する。

 今月4日のNHKの「映像の世紀」は、『田中角栄 列島改造の夢と転落』だった。新潟県の子ども7人の農家に生まれて十分な学歴の無い少年が、文字通り刻苦勉励して首相になる物語は周知の通りだが、政治家としてのその出発点が群馬県と新潟県を分つ三国峠を切り開く(のちに道路トンネルとして実現)であり、その延長が『日本列島改造論』だった。

 今太閤とまで囃されたその人気は「オイルショック」に起因する「狂乱物価」で急降下し、さらに「ロッキード疑惑」などの「金脈問題」で地に落ちた。しかし、東京をはじめとする太平洋側の大都市の側の評価が正しいかという私の疑問は消えない。

2023年12月5日火曜日

最近の女の子の名前

  最近の女の子の名前(姓ではない)に子が使われなくなったことは無論知っている。しかし、今朝の朝日新聞に23年生まれの名前のランキングが載っており、14位までに子のつく名前がゼロとは.............。今更ながら隔世の感がある。

 私は二十数年前に卒業式で卒業者の名前を読み上げる担当者となったことがある。誤読は絶対にあってはならないので、間違え易い名前には事務方が振り仮名を付けてくれていたが、全体で1割以下だったと記憶している。ところが今回の14名のうち私には9名の名前の読み方の見当がつかなかった。生徒の親には式典で係が読み易くする義理は無いかもしれない。それでも独りよがりが極まったとは感ずる。

 独りよがりか否かは別にしてこの変化がわずか二十年余りの間に惹起した変化であることも驚きである。九十年も生きてくると二十年などこの間のように感ずる。もっともこの感覚は経験してみないと持てないだろうが。平凡だが、光陰矢のごとしということか。

2023年11月25日土曜日

麻布台ヒルズへの道

  昨日の朝刊各紙に2ページを独占して麻布台ヒルズの広告が載っている。これまで日本一の高さだった大阪のあべのハルカスをしのぐ高層ビルと場違いの緑の草原?が注目されるのは当然かもしれない。

 建築主の森ビルの数年前に亡くなった森稔社長は大学の最初の2年間のクラスで同級だっだ。彼は当時は文学好きで、クラスが一年次と二年次に大学祭で上演した二つの劇の演出を担当した(私は前者では一言も発しない酒場の相客役。後者では祭り全体の執行部との連絡係だった!)。その後彼は家業の貸ビル業に従事し、アークヒルズ、六本木ヒルズなどの建築主となり、我々の同窓会は新築のヒルズ群(御殿山ヒルズやお台場のレジャースポット「ヴィーナス.フォート」なども)で開催されるのが通例となった。

 ヒルズ建築群が最初のアークヒルズから大きな話題を呼んだのは、その実現のため百戸以上の住宅群を納得づくで撤去すると云う驚くべき努力の結果だったからである。何処にそんなエネルギーがあるかと思わせる物静かな男で、同窓会でも決して話題の中心では無かった。私などは観光地としてのシンガポールの躍進を知って初めて「都市間競争」の存在に気づいたが彼は早くからそれを意識していたのだろう。先見の明とそれを実現する不屈の忍耐力を備えた稀有の男だった。今日の麻布台ヒルズの開場を見せたかった。

2023年11月19日日曜日

  駐米親善大使 大谷翔平!

  すでに今年度のア・リーグのホームラン王の栄誉を獲得していた大谷翔平が、今度は同リーグのMVPに選ばれた。 旧制中学以来の野球ファンの私にとってこれ以上の快挙は無い。全国の野球ファンも同感だろう。

 二つの栄誉で示された米国での大谷人気はむろん投打での数々の実績によるものだが、それだけでは無く野球少年がそのまま成人したような彼の競技への真剣な姿勢にもあろう。出塁したら盗塁したがる投手などこれまでに居ただろうか? と云うことは彼のシングルヒットや四球はしばしば二塁打の価値があると云うこと。彼の野球への真摯な態度は米国人ファンの目には、最近バスケットボールやフットボールの人気に苦戦していると聞く野球の伝道師のように映っているのではないか。

 他方、われわれ日本人はこれまで彼ほどの駐米親善大使を持ったことはないのでは? 来年度も好漢大いに活躍して日本人への好感度を高めてほしい。

2023年11月13日月曜日

あちら立てればこちら立たず

  徳冨蘆花の『自然と人生』の中で作者は自家の庭が「十坪に過ぎず」とたしか書いていた。語感としては狭いと言い訳しているようだが、明治時代の借家の庭としてどうなのだろうか。

 測ったことはないが、我が家の庭の面積も似たようなものだろう。広いのか狭いのか何とも言えないが、50年以上前の多摩市の規制では敷地面積に対して小さな家しか建てられなかった(のちに緩和)のでそうなった。 松竹映画『結婚します』で竹脇無我の自宅として一瞬利用されたが、映画の中では「母1人子1人の家」とされていた由!

 以前に書いたように、美観のため庭に夏蜜柑の木を植えたかったがすぐに入手できず、温州みかんに一年先を越された。おかげで最盛期にはみかんを買わずに済むほど恩恵に与ったが、去年を最後に枯れ、今年に完全除去した。すると夏蜜柑の木の存在がクローズアップされ、最初の希望が半世紀近く経って突如実現した。

 しかしこれまで蜜柑(と一口柚の木)が前の道路を歩く人の視線を遮ってきた恩恵も失われた。なにやら庭と道路が一つながりになった感じで、あわてて最近は全く使っていなかった車庫の前のサビだらけの鉄の鎖を復活して何とか格好をつけた。あちら立てればこちら立たずとはよく言ったものである。

2023年11月7日火曜日

ガザ住民をハイジャックしているハマス?

 今日の朝刊各紙が一斉にガザでの戦闘を大きく扱っていると思ったら開戦後1か月になるからのようだ。連日の戦闘報道に比べると各紙ともパレスチナ紛争の全体を論ずるように努めている。その中では一方の当事者のハマスを解説した『東京新聞』の「ハマスとは」との見出しの記事がいちばん本質をついているのでは。
 イスラエル以外は日本を含めて各国ともガザでの戦闘の少なくとも一時ストップを願っている。しかし、その第一歩ともなる可能性のある人質の解放をハマスは外国人に限っても拒んでいる。それは『東京新聞』の記事のように、「ハマスには住民の犠牲も宣伝戦の材料と捉える酷薄さがある」「人道危機に陥っているガザの現状も、ハマスにとっては『想定内』だろう」と捉えるべきなのではないか?  いわばハマスはガザ住民をハイジャクしているとも言える。最近のアラブ穏健派諸国のイスラエルとの国交正常化の動きに何としてもストップをかけたいのだろう。
 しかし、だからと言ってガザでのイスラエルの戦闘継続が同国のためになるかは別問題である。少なくともアラブ穏健派諸国も世論の動向には逆らえず、戦闘の続く限りイスラエルとの国交正常化は論外となるだろう。国民感情に流されないことの重要性はイスラエルにも当てはまるだろう。

2023年11月6日月曜日

旧友との永遠の別れ

  昨日、高校以来の友人の葬儀に出席した。本当は旧制中学以来の同期生なのだが、クラスも違ったし、彼はスポーツ(特にバレー)が得意。私は草野球以外のスポーツに関心がなく、当時の言葉で云う「ラジオ少年」(鉱石ラジオや鉄道模型を作って遊ぶ)だったので、ほとんど交渉がなかった。しかし、高校2年生の頃から同じ大学を目指していることを知り親しくなった。しかも大学入学後に私の関心が文学から歴史に変わり、結局同一学科に進学した。

 その後、私は大学院に進み彼は共同通信社に入社し、会う機会も乏しくなったが、教養課程時代のクラスの同窓会では何度も再会した。今年も8月ごろもう一人の高校同級生と三人で食事を共にしたばかりだった。その後、西洋史学科時代の登山仲間で集まろうと先月下旬に二度電話したが応答が無かった。ところが月末に警察から照会の電話があり、死去を知った。夫人は数年前に亡くなられていたので、御子息が不審に思うまで時間がかかったのだろう。

 葬儀は新横浜で盛大に営まれた。しかし私の住む多摩市とはJR横浜線の橋下経由でかなり距離が有り、老骨には結構大変だった。乗り物好きの私に生涯に一度は同線に乗せてやろうとの深謀と受けとめた!

2023年10月28日土曜日

「減税 VS給付」論争に意味はあるか?

  現在開会中の国会、 与野党の意見対立点はいろいろあろうが、現在のところは最近の経済情勢で生じた余剰金を減税で国民に還元するか、給付金で還元するかが問題となっているようだ。両者の違い、得失はその人の経済的位置により異なるだろうし、経済に疎い私はどちらかに軍配を挙げたくない。

 しかし与野党とも、世界の先進国で最悪と言われる借金大国の日本は余剰金を国民に還元することよりも予算の赤字を大量の国債発行で糊塗している現状を改めようと提案しないのは不思議である。

 国家財政と家計は同一の尺度で計れないだろうし、先進諸国の高いインフレ率を考えると現在の我が国の経済は比較すれば良い方なのだろう。しかし、数年前の価値がほぼ半減した円のおかげで輸出産業や観光業が活況を呈しても、国債による赤字補填を続けていって良いとも思えない。議会民主主義に健全財政を求めることの困難は避け難いのか?  

2023年10月22日日曜日

パレスチナに二国家共存は夢か

  ガザ地区をめぐるハマスとイスラエルの対立抗争は一向に沈静化しない。イスラエルにより封鎖されたガサにようやく20台の物資補給のトラックが入境したが、無いよりまし程度の量。 メディアは当然にガザ住民の窮状を連日伝えるが、問題解決は遥かに遠い。

 ハマスは200人とも言われる人質のうちの2人の米国人を解放したが、問題解決のためのそれ以上の人質解放を拒んでいる。今回の衝突の一半の目的が人質獲得にあった以上当然かもしれないが(軍事力で勝つ可能性はないので)。

 国際連盟下にパレスチナを委任統治した英国政府はアラブ人の反感を恐れてシオニズムによるユダヤ人の帰国を歓迎しなかった。第二次世界大戦後も1947年のイスラエル建国までは変わらなかったのでユダヤ人の反英運動はアメリカ映画『栄光への脱出(原題はエクソダス)』に描かれたように英軍施設の爆破にまで及んだ(ただし直前に予告)。

今朝の朝日新聞に珍しく襲われた側のイスラエルのキブツの惨状が紹介されている。半世紀前に成員の平等を基とする共同体としてある種理想社会のように受け取られていたが.............。

 問題の解決は絶望的のようだが、アラブ諸国も大半はパレスチナでの二国家共存を認めているのだし、イスラエルがガザ侵攻を断念し、ハマスが人質を全員解放することから出発する他はあるまい。

2023年10月17日火曜日

谷村新司を忘れない

 シンガー・ソングライターの谷村新司があの世に旅立った。芸能人を呼び捨てにしても許されるだろうが、私などが呼び捨てにする相手ではないとも思う。

 といっても私は彼のファンと言えるのか? 今朝の朝日新聞に彼の代表作?10曲が挙げられているが、私が知っているのは『冬の稲妻』『いい日旅立ち』『昴』『群青』ぐらい。検索してみたら彼が作詞や作曲した歌は大変な数にのぼるようだ。しかし、作曲数だけが問題ならば戦前からの古関裕而や古賀政男に及ばないだろうし、戦後でももっと作品数が多い人はいるのではないか。それでも『いい日旅立ち』は、さだまさし作の『秋桜』と並んで山口百恵の声とともに忘れられない。

 しかし、私は『群青』を忘れてほしくない。東宝映画の『連合艦隊』のテーマ曲だったと聞くが、太平洋戦争で海に散った海軍将兵の親の悲しみを歌って胸に突き刺さる。前大戦の犠牲者への鎮魂歌は『長崎の鐘』が代表だろうが、『群青』もそれに匹敵する、いやそれ以上の鎮魂歌だと私は思う。ぜひ多くの人に知られてほしい。

2023年10月13日金曜日

気になる表現あれこれ

  このごろテレビ放送を聴いていて気になる表現が少なくない。MCとはmain casterの略称だと思っていたが、master of ceremonyのことだと聞く。しかし正式の説明を聞いたことはないので、そうらしいと思うだけ。同様に英語の略称(NATOのような)の場合、私はそれでも平均的日本人よりは略称から正式名称が想像できる方だと思っていたが、最近のように使用頻度が高くなってくると分からないことも多い。

 略称も戸惑うが、日本語でもこれまで聞いたことのない表現を聞くとどうにも違和感を覚える。最近では「推し」や「沼ハマ」もそうだが、「更なる」なども昔は聞いたことが無かった。昔なら「一層の」だろう。

 最近やたらに使われる「関係性」という言葉も気になる。実際、「関係」と言い換えて何の違いも感じられないケースがほとんどである。どうしてわざわざ複雑にする必要があるのか? そんなことで庶民との違いを出したいのかと嫌味を言いたくもなる。芸術の世界ならいざ知らず、日常の表現は分かりやすいのが一番だと思う。日本のイスラム圏研究者の中にコーランのことをわざわざクオラン?とか書いている人がいる。専門家振りたいのか?(これは私もやりかねないか)

2023年10月9日月曜日

アラブ・イスラエル紛争

  イスラエルとアラブの対立が何回目かの衝突を引き起こした。これまでの何回かの中東戦争と異なり、今回はパレスチナ解放機構PLO全体が関与しているのではなく、むしろPLO主流派とも対立してガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの武力衝突だが、反イスラエルのアラブ人たちにはその差は大きくないだろう。

 第二次世界大戦後のイスラエル建国時に起こった第一次中東戦争について私の記憶はゼロ。 しかしナセルのエジプトのスエズ運河国有化に対して英仏が起こした第二次中東戦争にイスラエルも加勢した「スエズ事件」は記憶している。英仏の介入を植民地主義と批判した米国に抗しきれず両国とイスラエルは撤退してナセルの威信は高まった。

 私が在英中に起こった第三次中東戦争はイスラエルのアジア側への唯一の港であるシナイ半島のアカバ港をナセルが閉鎖したことが発端となった(スエズ運河はスエズ事件以後イスラエルには使用禁止)。それではイスラエルは立ち行かなくなるのではとの欧米の記者の質問にナセル大統領は黙して答えなかった。それが傲慢な印象与えたこともあり、英国世論は宿敵ナセルに厳しかった。当時大学の食堂で会った著名な日本研究者のストーリー氏は開戦となったらイスラエルは強いと力説したのは願望も込められていたのだろう。敗戦でナセルの権威が低下したことは言うまでもない。

 19世紀に始まるヨーロッパのユダヤ人のイスラエル建国運動が第二次世界大戦後に国連の「パレスチナ分割決議」として結実した主な理由はナチスによるホロコーストへの欧米人の贖罪意識だろう。しかしアラブ人には理解も承認もできなかったろう。

 本来はアラブ人もユダヤ人も同じ中東の民だったが、ユダヤ教とイスラム教という宗教の違いが発端となり敵同士となってしまった。宗教心の薄い大部分の日本人には理解できないところがある。

2023年10月7日土曜日

「国境の壁」建設の再開

  メキシコとの国境の米国側にトランプ政権が建設中だった大がかりな鉄製の壁は民主党バイデン政権発足後は建設中止となっていたが、建設再開が決まったという。近づく大統領選挙を前に国民の不評に抗しきれなかった。

 不運もあった。新しいバイデン政権はトランプ政権よりも不法入国者に甘いとの噂が広がり、越境者は大幅に増加していた。他方、とくに中米諸国は麻薬販売で力をつけたギャングたちが殺人を含む無法状態をつくっており、国外脱出は生命を守るためでもあった。メキシコはむしろ通り道でもあった。とはいえ、何十万人の不法入国を許せば近づく米国大統領選で民主党は甚だしい不利となる。背に腹は変えられなかった。

 他方、ヨーロッパでもEU諸国へのアフリカ難民の大量流入は各国政治の右傾化をもたらしている。あまりの多人数や経済的動機の入国は御免だということだろう。中南米諸国は独立後200年、アフリカ諸国でも独立後数十年を経ているのに経済的に(時には政治的にも)自立できないとあれば、ヨーロッパ諸国も寛大ではいられなくなった。地球温暖化の責任を自覚する先進国側も経済援助以上は御免だというのが本音なのだろう。

2023年10月2日月曜日

民間駐米大使 大谷翔平

  今年度のア・リーグのホームラン王が大谷翔平と決定した。野球ファンの私にとってこれ以上の快挙は考えられない。我が国の野球ファンにとっても同様だろう。投手として10勝を挙げているし、ア・リーグのMVP固いのではないか。エンゼルスの監督が「彼は特別だ」と言ったが、米国の野球ファンも同感だろう。

 米国での大谷の人気はむろん投打での数々の実績に発しているが、それだけでなく野球少年がそのまま大成したような彼の競技への真剣な態度にあろう。以前にも本欄に書いたが、出塁したら盗塁したがる投手などこれまで居ただろうか。 数字は知らないが、彼の盗塁成功率はかなり高いのではないか。ということは彼のシングルヒットや四球はしばしば二塁打の価値があるということ。

 彼の野球への真摯な態度は米国人ファンの目に貴公子のように映っているとでは?  我々日本人は彼ほどの民間駐米大使を持ったことはないのではないか?

2023年9月28日木曜日

映画『カサブランカ』の時代

  イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガード主演の米国映画『カサブランカ』をテレビで今日午後見た。  六十数年前の学生時代に一度見ているので再度見るつもりはなかったが、たまたまチャンネルを回したら、主演の二人の魅力に取りつかれ、最後まで見てしまった。

 そうなったのは私が昔からバーグマンのファンだったためもあるが、今回は時代背景がヴィシー時代(フランスが大戦当初ナチス・ドイツに敗れ対独協力政権下にあった時代)だったので、私の専攻分野と一部重なるためでもある。

 第一次大戦の勝者フランスは戦争被害のあまりの巨きさに戦後は厭戦気分が支配し、ドイツがナチス政権下で着々と再軍備を進めても目が覚めず、第二次大戦当初ドイツに国土を占領された(本土の南半分とアフリカ北岸の植民地はドイツの間接支配)。 その結果ドイツの敗戦後は対独協力政権の指導者たちは死刑となった。

 大戦終了後ほどなく制作された『カサブランカ』はまさに対独協力政権を祖国への裏切者とする立場から描いている(単純化すれば)。首都をナチスに蹂躙されるまで戦ったポーランドとことなり、フランスは当初形勢非となるとパリを非防備都市と宣言して実質的に休戦した。そのおかげでパリのほとんどの観光名所は無傷のまま大戦終了を迎えた。ポーランドとフランスとどちらが賢明だったかは評価の分かれるところだろう。

2023年9月25日月曜日

『不如帰』の真実?

 先々週の土曜日、芦花公園で毎年今ごろ開かれる「蘆花忌」に十数年ぶりに出席した。以前は数十人が出席する行事だったが、「明治は遠くなりにけり」か、さすがに蘆花ファンも数少なくなり、今回の出席者は十数人だった。                     

 今回の講演のテーマは『不如帰』。 新派?の劇としても大評判となり、姑にいじめられる浪子の「もう、二度と女なんぞに生まれはしない」とのセリフとともに超有名になったことは私も知っていた。しかし私も原作は読んでいないので耳学問のため出席したのである。

 ところが、講演者の明治文学研究者の語るところでは、 当時は結核は本当におそろしい病気であったのであり( 現実の大山信子も間もなく死んだ)、夫婦仲を引き裂く行為はいじめとは言い切れないとのこと。さらに信子の継母の大山夫人捨松は、かつて津田梅子とともに明治最初の留学生だった山川捨松であり、米国で看護学を学んでいたとのこと。

 かつて鹿鳴館の華とうたわれた山川捨松が『不如帰』での自分の描き方に立腹したのは無理もないが、芦花は彼女の三回目の抗議にようやく非を認めたという。人間の評価は本当に難しいということか。

2023年9月19日火曜日

女性の感性を活かすべし

 岸田首相が女性新閣僚に「女性ならではの感性と共感力」を生かして仕事をしてほしいと発言したことが一部の反発を呼んだと聞く。その後の続報が乏しいので大きな論議とはならなかったようだ。結構なことである。

 首相発言が不満な人たちもまさか男女の感性が同じとは主張すまい。それなら、これまで男性の感性が優位に立ち、その影響下にできた既成の制度や風習を改めることは当然ではないのか。ところが、在米十数年の知人は米国では首相批判の主旨は当然とされるし、自分もそう思うとのこと。

 米国は人類の進歩にさまざまに貢献してきたが、集団ヒステリーにも再三罹ってきた。17世紀のマサチューセッツ植民地のセーラムでの少女の発言に発した「魔女狩り」は文学作品にも取り上げられ有名である(もっともヨーロッパでもこの時期同じ事態は起こったが)。近年では第一次大戦後の「禁酒」騒動がアルカポネの名とともに有名である。アルコール度数の高い酒は人体に有害であるとして取引を禁止したところ、ギャングたちの絶好の資金源となり、法律は廃止された。

 近年では共産主義者にへの恐怖に発する第ニ次世界大戦後の「赤狩り」も有名である。ところが第一次大戦後の「赤狩り」はそれ以上に激しかった(F. L. アレンの名著『オンリー・イエスタデイ』に詳しい)。米国民が先導する運動にも警戒心は必要である。

2023年9月15日金曜日

不登校児の増加

  最近、不登校児の問題がメディアで取り上げられている。たまたま今朝のテレビ番組で全国の小中学校で年間の総数が21年度は24万5千人に達すると報じていたので、これは容易ならざることだと感じた(十年前より小学生は3.6倍。中学生は1.7倍とか)。年々日本の人口が減少し、したがって就学児も減少している中で増加とは、ご家族の困惑が思いやられる。

 不登校児の増加の原因はむろん単純ではないだろう。今後の究明に期待すべきである。しかし、その一因として私は少子化があるのではと推測している。

 兄弟姉妹の関係は無論それぞれの家庭で一様ではないが、親子関係と異なりある種の生存競争の側面もあるのではないか? 私には姉妹はいないが、兄たちとは当然喧嘩もあったし、親の愛の奪い合いの側面も皆無ではなかったと思う。その意味で家族も極小の社会の側面を持つ。しかし、少子化によりそうした経験が稀な児童が就学すれば戸惑いは生まれるだろう。現在の少子化のもと1クラスの児童数は減少していても、教師の個別的対応には限度があろう。問題解決への道は簡単では無さそうだ。

訂正 前回、小津安二郎を康次郎としたのは誤りでした。恥ずかしい!

2023年9月12日火曜日

訂正

  前々回で「著者はエスペランチストで小説家の宮本百合子」とあるが、エスペランチストは『極光の陰に』の著者のことで、百合子がエスペランチストかは知らない。句読点を失念しました。

日本映画の国際性とは?

  今年のベネチア国際映画祭で濱口竜介監督の邦画『悪は存在しない』が銀獅子賞に選ばれた。その昔、黒澤明監督の『羅生門』が同映画祭の金獅子賞を得た時の日本人の驚きを覚えている者には、三大映画祭での日本映画の受賞がそれほど大きな話題とならない現在とは隔世の感がある。同じ黒澤明監督の『七人の侍』など、欧米の監督が敬意を込めつつ日本映画の焼き直しのような作品を作るようにもなった。

 黒澤監督の作品群のようなスケールの大きな作品とは正反対のような小津康次郎監督の作品群が欧米で高く評価されるとは当時は想像もできなかったのに、今では小津康次郎の評価が欧米で滅法高いのも私などの世代には驚きである。

 日本的であることが世界でマイナス評価とならない時代になったが、当時は黒澤明と並び称される人気だったものに木下恵介監督の作品群がある。日本最初のカラー映画の『カルメン故郷に帰る』や『二十四の瞳』や『喜びも悲しみも幾歳月』など当時は「国民的映画」とも呼ぶべき作品群が、こんにちそれほど顧みられていないのは大ファンだった私には不満である。それともいつか再評価される時代が来るのだろうか?

 

2023年9月6日水曜日

戦後左翼異聞

  今朝の『朝日新聞』にエッセイストの中野翠氏の連載コラムの第一回が、「世間知らずにあふれる正義感」との見出しで載っている。氏は私より13歳年下だが氏のこれまでのコラムはセンスにとみ面白く読むことが多かった。 氏は名門の浦和第一高女の「リベラルな左翼」の新聞部の顧問の影響を受けて図書室の『今日のソ連邦』という同国の宣伝誌の読者にもなり、その宣伝をそのまま信じていたという。 

 私が大学に入学した1952年はメーデー当日に警官隊とデモ隊が激しく衝突した「皇居前広場事件」の年で、大学は日本共産党に近い全学連が華やかな時代だった。 地方の高校出身の私が大学の学生寮に友人を訪ねたら「党が」「党が」と討論していて面食らった(党とは無論日本共産党のこと)。 その後は私も渋谷駅前の非合法集会?に参加して道玄坂の途中まで警官に追われた。

 しかし、私はそれ以上は左翼学生運動に参加しなかった。私の非実践的性格が一因だったのだろうが、入学後に高杉一郎氏の『極光のかげに シベリア俘虜記』(1950年 目黒書店。現在は岩波文庫)を読んでいたことも大きかった。著者はエスペランチストで小説家の宮本百合子(戦後出獄した宮本顕治の妻となる)ら「リベラルな左翼」のグループの仲間だった。

 しかし、戦後シベリアに抑留され、ソ連共産主義の実態を身をもって体験してそれを発表したのである。とうぜん既成左翼からの批判は激しかったようだ。のちの高杉氏によれば宮本百合子と旧交を温めていたら夫の賢治氏から「あゝゆうものを二度と書いたら許さないぞ」と宣告されたという。

 明日からの中野翠氏の連載が待たれる。

戦後左翼異聞


2023年8月30日水曜日

大谷翔平選手の今後の起用

 好事魔多しという諺どおり、エンゼルスの大谷選手が腕の故障で今季の投手としての役割を終えた。残念至極だが既に10勝を挙げているので、十分にチームに貢献したと言える。今後打者として出場続けることが医学的に問題がないのか気がかりである。しかし本塁打の本数で第二位に10本の差をつけており、欠場して逆転され本塁打王の名誉を失う可能性を考えると、やはり打者として出場し続けて欲しい。

 望まない事だが仮に大谷が今シーズン打者として出場し続けて投手としての生命を短くする可能性があっても、すでにベーブ・ルース後の100年間に誰も成し得なかった投手と打者の二刀流を成し遂げた事実は燦然と輝いている。大リーグのルールを改めさせた(大谷ルール)のも快挙というほかない。

 スポーツ選手は成績が全てとは思うが、大谷選手ほど人柄でも日米の野球ファンの心を奪った(先日は敵地のスタジアムで大谷の敬遠にブーイングが起こった)選手は稀ではないか。私の当面の願いは新聞がその日の邦人選手の打撃成績を四球も含めてもっと詳しく報ずること。盗塁に励む投手など前代未聞では? 私だけの希望ではないと思うが.............。

2023年8月22日火曜日

もっと早く実地体験を!

 私は小中高を通して学力ではさいわい上位グループに入れたが、運動能力はやっと中位程度だった。そのため運動会はあまり楽しくなかった。教室ではぱっとしない級友たちがすばらしい走りを披露するのを眺めるばかりだった。

 今朝の『朝日』の多摩版(ほかの版も?)に、「働く経験 社会と接点、 自信を」との記事が載っている。「不登校などの中高生に NPO、足立で取り組み」との小見出しにあるように、「発達障害や不登校などの中学生に働く経験を積んでもらう試み」が足立区で導入され、「賃金という対価を得て自信を深める」子もいるという。

 かつては小学6年ののち高等科2年で社会に出る生徒が農村などでは普通だった。しかし今では高校は准義務化。短大を含めれば大学進学者は半数に達したと聞く。しかも中高で習う授業内容は高度化している。これでは学力の低い生徒は立つ瀬がない。しかし、社会に出れば手先が器用とか根気があるとか、学力以外の能力の方が役に立つケースは多いだろう。学力の高くない生徒に自分の能力への自信を回復させる足立区の試みは全国に拡大されて良い。

 私が高校生の時、郵便局から学校に宛名書きの大量アルバイトの募集があり、多くの級友と参加した。ところが文字を書くスピードの遅い私への支払いは平均以下だった。支払い係の局員は遅くとも間違いがない方が良いと精一杯慰めてくれた!

2023年8月17日木曜日

天国と地獄

  3日ほど前だったか、北アルプスの「伊藤新道」が40年間も廃道になったあげく今夏、山小屋関係者の努力で復活したとの記事(朝日)を読んだと思ったら、昨日の同紙の朝刊に1ページ分の写真入りの伊藤新道の再建の記事が載っていた(そんなに大きなことなの?)。

 記事には略図が含まれるので一目瞭然だが簡単に言うと、 槍ヶ岳を終始南に見ながら湯俣温泉から三俣蓮華岳と鷲羽岳の鞍部の三俣山荘までの10キロの山道を山荘の主人の伊藤正人さんが1956年に開通させた。しかし、かなりの悪路なので四半世紀で通行不能となった。

 私は開通後の3、4年間に2度下山路に利用したことがある。最初は同じ学科だった登山仲間の山行。2度目は有名進学校の登山部の顧問としてだった。どちらも通常の槍ヶ岳登山ののちそのまま下山では惜しいので三俣山荘からさらに奥の「雲の平」と呼ばれる黒部川の源流に囲まれ池塘に富む美しい台地を訪ねたのである。ところが、初回に雲の平にテントを張ってしたように次回も這松を燃料に飯盒飯を炊いたところ、谷間を隔てる三俣山荘から営林所員が飛んできて頭ごなしに叱り飛ばされた(生徒たちの前で)。たった3、4年ほどの間に山の中も世知辛くなっていたのである(むろん先方が正しいのだが.............)。

2023年8月14日月曜日

革命の陥穽

 見終わってうっかり消去したので日付は不明だが、最近録画したNHKのダーク・ミステリーという番組の『美しき処刑人とフランス革命』を見た。衝撃だった。

 フランス革命がどういう経過を辿って過激化し、最後は自滅してナポレオン帝政に至ったかは高校の世界史の教科書や授業で誰でも知っている。本番組の特異さは王政時代から代々死刑執行人の家柄に生まれたサンソンが革命の深化とともに国王一家、穏健派(ジロンド派)、急進派(ジャコバン派)の人々を新しく考案された能率的な殺人機械のギロチンで次々と処刑するストーリーでありること。革命期の死刑執行人サンソンの名は私も知っていたが、彼がフランス革命の全過程で処刑の詳細な記録(日記?)を残していたとは知らなかった。 

 最初は穏健派が指導した革命が次第に急進化してジャコバン派のロベスピエールの独裁のもと昨日までの仲間さえギロチンのつゆと消えた。その間サンソンは犠牲者たちへの同情にさいなまれながらも忠実に仕事を続けた。

 番組を見終わってフランス革命とロシア革命(とソ連)の経過の著しい類似性にあらためて強く印象付けられた。どちらの場合も高い理想を掲げて出発したもののロベスピエールとスターリンの最悪の独裁に終わった。ストップをかけられなかったのは誰しも自分の身が可愛かったのだろう。無理もないと思うが、言論の自由や三権分立などの必要性はどれほど強調してもしたりない。

訂正  前回、 移民団地の中庭で羊が殺されたと書いたが、林氏の著書では中庭で殺されたのは鶏で、羊は地下室でした。

2023年8月10日木曜日

フランスの人種暴動

  1ヶ月半ほど前にパリでクルマで停止命令を無視したアラブ少年が警官に射殺された事件があり、これに対する抗議の暴動があった。月刊誌『世界』の9月号に山下泰幸氏の「フランスの『郊外暴動』に終わりはあるのか」と題する論稿が載っている。それによると今回5954台のクルマが燃やされ、1092件の建造物破壊(うち108ヶ所の学校、39ヶ所の図書館)、723人の警官が負傷。逮捕者の平均年齢は17歳とのこと。日本では想像もできない激しさである。

 フランスは1950〜60年代の経済成長期にアルジェリアやモロッコなどの植民地から労働者を受け入れた。さらにアルジェリアが武力闘争の末に独立すると、深い考えもなくフランス軍の一部として独立派と戦ったアルジェリア人十数万人は母国では死刑になりかねず、フランス本土に引き取られた(アルキと呼ばれる)。彼らアラブ人はパリなどの大都市の郊外の団地に住んだが、フランス語を理解できない彼らはフランス社会に統合されることはなく、そのため何年かごとに暴動を繰り返してきた。子弟たちはフランス語で教育を受け、フランスは「自由 平等 博愛」の国だと教えられたが、実態との乖離は甚しかった。

 フランス政府が彼らを意図的に差別したわけではなく、社会党のミッテラン政権など融合に努めた。しかし、イスラム教をはじめとする文化的伝統の差に加えて生活習慣の違い(団地の中庭で羊を殺して解体するなど)も大きかった( 林瑞枝『フランスの異邦人 移民・難民・少数者の苦悩』 中公新書 1984年)。こうして移民の団地の治安にはフランス警察も容易に介入できないとなれば、せめて郊外団地外に治安悪化が拡大することは防止するというのが警察の本心なのではないか。そして移民以外のフランス国民の本心でもあろう。

2023年8月7日月曜日

世界帝国の評価

  現在、塩野七生氏の『完全版 ローマ人への質問』(文春新書 2023)を途中まで読んでいる(読書スピードの低下を認めざるを得ない)。 氏の著作は半世紀ほど前にルネサンス期のフィレンツェを描いた『チェーザレ ボルジア あるいは優雅なる冷酷』を刊行時に読んだ程度だから久しぶりもいいところ。 

 氏が現代日本で推しも押されぬローマ史家であることは言うまでもない。好きでなければこれほど古代ローマについて書き続ける筈がないとは予想していたが、読んでみてその通りである。事実、あれほどの大帝国を築いたローマ人の政治的能力が非凡なことは当然だろう(詳細は同書で)。

 しかし、私が大学生の頃読んだJ. ネルーの『父が子に語る世界史』は古代ローマ帝国に極めて厳しかった。それは当時インド独立を目指して大英帝国と戦って入獄していたネルーの立場の反映でもあった。しかしそこにある偏りがあったことは否めない。同書でのロシア革命とその指導者たち(とくにトロツキー)への評価は絶賛と言っていい。しかしその後のソ連がどうなったかを考えればやはり過大評価、むしろ危険な評価だったと言うべきだろう。

 独立運動指導者としてのネルーは立派だし、戦争中に動物園の像を殺してしまった(空襲時に危険との理由)日本に最初の象を贈ってくれた恩人でもあった。戦後来日して大学で温顔を身近に見ることができたが、学部学生には氏の講演を聞くことはできなかった。

2023年8月6日日曜日

ジェンダーレス・トイレの廃止

  『毎日』と『東京』の二紙に、新宿の歌舞伎町の「トー横」ビルのジェンダーレス・トイレが利用者に不評なので男女別に作り替えるとの記事が載っていた。さすが歌舞伎町、最近話題となっている男女別でないトイレが既にあったらしい。それに反対したのは多分女性利用者なのだろう(大半の男性は気にしないだろう)。

 訪ねたことはないが、「トー横」周辺は先進的な?若い男女の溜まり場として知られている。したがって其処の状況をどれだけ一般化できるかという問題は残るが、女性利用者からすれば外見だけ男性で実は女性の利用者と本当の男性との見分けが付かなければトイレ利用に不安を覚えるのは無理もないと思う。

 一般論として社会に現存するジェンダーの壁を破ることは望ましい。しかし、職場などでの男女平等要求とジェンダーレス・トイレの要求とはどれだけ関連があるのか。 もう少し熟慮が必要なのではないか?

2023年7月29日土曜日

朝鮮戦争休戦70年

  今年が朝鮮戦争休戦70年ということで、諸新聞が同戦争を回顧している。実は戦線そのものは2年前から固着していたのだが、北朝鮮も米軍主体の国連軍も敗北を受け入れられないため塹壕戦が続いていたのである。ウクライナ紛争がそうならないことを望むが.............(もうそうなっている?)。

 21世紀の現在、朝鮮戦争が北朝鮮により開始されたことを疑う者はいないだろう。しかし当時は、名前は忘れたが米国人のあるジャーナリストが、戦争開始直前にまもなく米国務長官になるダレスが訪韓していたことなどを理由に韓国先制攻撃説を発表し、我が国でもそれの亜流の書物が複数刊行されたり、総合雑誌にその内容が紹介されたりした。当時は大学生だった私も大学生協の売店でそのうちの一冊を購入した。戦争の具体的展開を追っていれば韓国の先制攻撃説はあまりに不自然に映ったが、もしかしてと考えたのである。

 金日成がソ連の後押しを得て建国した国に対し、当時のソ連共産主義への幻想のためか、「民主主義人民共和国」を名乗っていたためか、我が国でも判断を誤った言論人は多かったし、その延長線上に在日コーリァンの(北朝鮮)帰国運動があった。朝鮮戦争の起源が歪曲なく報道されていれば起こり得ない悲劇だったのだが。

2023年7月23日日曜日

庭木との我が闘争

 庭の温州みかんの木が冬を越せず枯れたと思ったら、今度は一口柚子の木が未だ小さい実をつけながら枯れだした。前者はうっかり身の程を超えた150個の実を成らせた結果と見ていたが、柚子も同じとなると柑橘類の木は寿命が短いようだ(調べたら30年ほどとか)。

 半世紀ほど前に家を建てたとき、狭い庭に不相応な数の庭木の苗を植えた。それまでの公団住宅住いの反動だったのだろう。どれもせいぜい身の丈ほどの背丈だったが樹木の成長のスピードは素人の予想を超えた。十年余りでヒマラヤ杉が邪魔になり切られ、成長の遅い椿も欝陶しくなってこの両三年で2本除去した。毎年美味しい実をプレゼントしてくれた次郎柿も収穫が危険になり、きりかぶとかわった。今秋には何故か成長したら花をあまり付けなくなったアメリカハナミズキの除去を予定している。

 そうした経験から神宮外苑の改造による樹木の減少にそれほどの反撥を感じなかった。ところが今週あたり、軟式野球場が無くなるらしいと知り、野球少年たちのため改造に反対したくなった。私が野球少年だった頃は自動車の通行は稀だったので道でキャッチボールができたし、自宅の近くの女子高(当時は女子中)の校庭は日曜は無人で他チームとの草野球が可能だった。現在はどこの校庭も事故や不祥事を恐れて休日は閉鎖が普通だろう。少年(今後は少女も!)から草野球を取り上げないでほしい!

2023年7月16日日曜日

人手不足対策としての移民

  昨日の朝日新聞に、「人手不足深刻 倒産の危険」との見出しの記事が載っていた。しかし具体的に「従業員を増やしたいが増やせなかった」が全企業の13.5%とのこと。全企業といっても飲食業や観光関連企業など、コロナ禍で従業員を整理した企業のケースが多いのだろう。それでも当事者には小事ではないだろう。

 一方、今朝の同紙には「ミャンマーで日本語 勢」との大見出しで、「渡航費高くても働きたい 能力試験に10万人」との小見出しが続く。軍部クーデター以後の国政の乱れの影響が大きいのだろうが、それにしても10万人が受験するとは驚きである。私はわが国が難民にもっと門戸を開いて良いと考える。しかし、移民も無条件にとまでは考えない。移民は原則として東アジア人中心でよい。

 我が国で活躍する白人の芸能人が最近少なくないし、私などむしろ彼らが実力以上に優遇されていると感じる。しかし彼らも少年少女時代は虐められたという人が少なくない。やはり容貌や皮膚の色の違いから来る違和感を子どもはブレーキをかけずに表面に出すということだろう。その点、東アジア人は日本人に違和感を感じさせることは少ないし、前大戦中に我が国が迷惑をかけた国も少なくないことを多くの日本人が知っている。日本で何年か働いて帰国するか永住するかの別なく歓迎したい。彼らが将来は親日派となるとかなりの確率で言えると信ずる。 私自身の在英体験からも…………。

2023年7月11日火曜日

玉城沖縄県知事の訪中

 玉城沖縄県知事が中国を訪問し、対岸の福建省にある琉球館と琉球墓を訪れた。そもそも沖縄は近代以前は日本と中国の双方に属していた(両属)とも聞くし、福建省にそうした施設が残存しているのなら訪問するのは自然である。しかしその後、中国のナンバー2の李強首相が玉城知事と会見したと聞き驚いた。格式にこだわる中国で、首相が県知事と会うとは。

 会見の報道に接して思い出したのは半世紀以上前の作家井上靖の中国訪問に際しての中国側の厚遇である。数年前?の同氏の『天平の甍』は、遣唐使の時代に高僧を日本に招くとの使命も帯びて中国に派遣された数人の留学僧の物語である。愚直に勉学に励んだ上に鑑真の招聘にも力を尽くした僧、 自分の知的能力に絶望して仏典の筆写と日本招来を自分の使命とした僧、性格が弱く望郷の念にかられた(「日本人は日本でしか本当には生きれないのだ」)挙句、現地人と結婚して仲間たちの帰国を見送った僧らを描いて英国留学半年前の私を深く感動させた( 前進座の公演も見た)。 当時、日中友好を宣伝していた中国が『天平の甍』の人気を見逃す筈もなく井上靖は破格の厚遇を受けた。

 その後、同じく作家の松本清張が中国を訪問したが先方は特別の配慮を示さなかった。自尊心を深く傷つけられた清張は帰国後に『文藝春秋』に旅行記を載せたが、 唐代の高僧名鑑に鑑真の名は載っていないとケチをつけた。名鑑と言っても一種とは限らないし、鑑真の功績が減るわけではないが.............。

2023年7月8日土曜日

苦しい弁明

  今朝の東京新聞の『本音のコラム』に師岡カリーマが、「エジプト人が怒る理由」と題する小文を書いている。怒る理由は二つ。一つ目は「クレオパトラを黒人として描いたネットフリックスの番組にエジプト人が猛反発」したこと。二つ目は「オランダの考古学博物館が西洋の黒人音楽家の創作の源として古代エジプトを紹介した(ように見える)こと」。

 エジプトを含む地中海北岸のマグレブ諸国の住民は黒人では無くアラブ人であり、ましてクレオパトラはギリシア系で黒人ではない。また、黒人音楽家の創作の源として古代エジプトを挙げるのも特別なケースを除けば正しくない。それにしても猛反発を生んだのは「『黒人と一緒にするな』というエジプト人のレイシズム?、残念ながら全否定はできない」とカリーマも認める一方、「でもそうとも言い切れない」「その心情を『黒人差別』で片付けることはそこに自らの投影を見て目を逸らす、文化盗用確信犯の驕りともとれる」と弁明する。文意ははっきりしないが、人種差別は自分達だけではないとのヨーロッパ人の言い訳だと言いたいようだ。

 それもあろう。しかし、書名は忘れたが昔に読んだ各国の教科書を比較紹介した本に、エジプト人は嘗て南隣のスーダン人を奴隷狩りの対象としたこと、しかしこの事実はアジア・アフリカ諸国の歴史教科書には全く言及がないと記されていた。レイシズムに洋の東西はなかったということだろう。

2023年7月1日土曜日

巨大観音像の後始末

昨日の朝の NHKのニュース番組で、巨大なコンクリート製の観音像の後始末の問題を取り上げていた。私が現物を見ているのは車窓からの大船の観音像ぐらい。それでも関東の牛久大仏や高崎山の大仏は映像でお目に掛かっている。しかし、番組に写っていたのは石川県のどこかの大仏であり、同類は全国にあるという。

 仏教の信仰の厚い人たちが巨大観音像を建立することに私は反対ではない。しかし、建立時の番組に写っていた建築主は年間百万人が訪れるだろうと語っていたが、昨日の番組によると建立当初は知らず現在の訪問者は少なく、老朽化して危険物と化している。建築主には9億円の撤去費用を支払う力はなく、行政(県?)が負担することになるという。

 今回は巨大観音像のケースだが、全国にはスキー場をはじめ観光客の来訪を期待して建設されたさまざまな観光施設が当初の人気が去り重荷と化しているケースは少なくないのでは。見込み違いは何事にも起こりうるが、安全のためという理由づけで後始末を公費でというのはいただけない。

2023年6月26日月曜日

富士登山の思い出

  世界遺産に選ばれてから富士登山をする外国人も多いらしい。配達されたばかりの夕刊の『朝日』に来月山開きとなる富士登山について、「山開きへ 憂える弾丸登山」「泊まらず夜通し 高い高山病リスク」との見出しの記事が載っている。危険は避けるに越したことはないが、夜通し登山が主流で無くなることは難しいのでは。そもそも5合目より上の全ての山小屋の収容能力は乏しいし、頂上で御来光を迎えたい人が多いから。

 私が友人と富士登山をしたのは60年ほど前で、当時すでに富士スバルラインは開通しており、やはり夜間登山だった。登るにつれ酸素が希薄になり確かに相当苦しく、頂上火口の縁に着いた時には疲労は頂点に達していた。そのため御来光を拝んだのち2人ともそのまま寝込んでしまい、気がついたら友人のカメラが盗まれていた。未だそういう時代だった。下山路は須走口を選んだが、深い砂の道のため一歩で二歩分下りれるので楽だった。

 世の中には何度も富士登山する人がいるらしいが、火山灰の山で花も池塘も無く、私は再度登りたいとは思わなかった。私の町には今どき珍しい八百屋があり、主人はひたすら富士を写真に撮り別室に展示している。絵葉書にも加工している本格派だが、頂上の写真は皆無。 私見だが、やはり富士は下から仰ぐのがベストではないか。

2023年6月21日水曜日

教員の早期退職の原因

  教員採用試験の応募者が減少しているとは最近よく報じられているが、今日の朝日新聞によると退職する教員も増えつつあり、しかしも最近は精神疾患による退職が増加しているとのこと。事実ならば容易ならざる事態である。

 これまで教員死亡者の減少の理由はマスコミでは給与の低さと長時間労働に帰せられてきた。しかし、教員の超過時間労働のためだけに精神疾患に罹るとも思えないし、まして低収入のゆえにそうなるとは思えない。やはり主な理由は生徒(と親)への対応に悩んでのことではないだろうか。

 最近学校での生徒の人権の尊重が叫ばれている。しかし、小学校高学年から中学までの生徒はヤンチャな時期であり、自分を顧みても身勝手だった。彼らへの対応は容易ではあるまい。生徒指導に悩んで管理職に訴えても彼らも親から生徒の人権を持ち出されたくはない。こうして誰も頼りにならなければ精神疾患にもなろう。

 教員の超過時間労働は早急に改善すべきだが、私には低給与や長時間労働が精神疾患の主因とは思えない。

2023年6月15日木曜日

軍隊内のいじめ

  未だ18歳で自衛隊正式入隊前の候補生が射撃訓練中に指導教官役の隊員2名を射殺し、1名を負傷させた。射殺の理由は未だ明らかではない。殺すほど憎んだのなら何らかの恨みからの犯行なのだろうが、まだ3ヶ月にも満たない期間で殺人を決意させるほどの厳しい指導があったのだろうか。軍隊だから一般社会よりは厳しい指導だったにせよ.............。

  軍隊内の厳しい初年兵指導といえば戦前の日本軍(とくに陸軍だが海軍も)のそれがサディスティックと呼んでよいほど暴力的だったことは一般社会にも広く知られており、軍国少年だった私でもそれだけはごめん被りたいと思っていた。野間宏原作の日本映画『真空地帯』(1952年)はその実態を描いて有名になった。

 しかし、上官の命令が絶対的になりがちな軍隊内では日本陸軍ほどでないとしても暴力的指導ないしイジメが横行しがちである。1953年に8部門でアカデミー賞を得た米国映画『地上(ここ)より永遠に』(モンゴメリー・クリフト主演)のハワイの陸軍内でのイジメもひどいものだった。結末はもう詳しくは記憶しないが、日本軍の真珠湾攻撃により主役たちも死ぬ。恋人役のデボラ・カーがハワイを去る船上で万感の思いで聞くアロハオエ。私も好きな美しいメロディーが同時に心に突き刺さる悲しいメロディーであると初めて知った。

2023年6月11日日曜日

サウジアラビアの政治

  昨日の東京新聞のコラム『本音のコラム』に定期寄稿者の1人の師岡カリーマ氏がサウジアラビアの絶対的支配者のムハンマド皇太子への評価を試みている。

 同皇太子は以前に自分を批判した記者のカショギ氏の暗殺を命じたとして話題を呼んだ。イスタンブールのサウジアラビア領事館が凶行の現場となったと考えられ、陰惨な印象を与えた。そうしたムハンマド皇太子にカリーマが好意を持つはずがなかった。

 しかし、その後の皇太子について『本音のコラム』でカリーマは、同国の宇宙飛行士に女性を登用したこと、このたび国際的音楽フェスティバルの「サウンドストーム」を自国で開催させそこにヒジャブやアバヤで顔を隠さない女性が多数出席した事実を紹介する。カリーマはフェスティバル開催を「朗報だが」「たまたま強権的皇太子の意向にそうから」許されたのであり、「逆にもっと本質的な人権改革を求める声もいまだに抑圧の対象だ」と警戒を緩めない。

 騙されたくないとの彼女の気持ちは理解したい。しかし私はカショギ殺害の当時も、サウジで初めて女性の自動車運転が許可されたとも聞いていたので判断を保留していた。今回もたかが音楽フェスティバルの問題と見るべきだろうか?  私は東ドイツを始め東欧諸国のソ連圏離脱に際し、若者たちの西側風俗 (ジーンズやマクドナルドのハンバーグやロック音楽などなど)への渇望が小さくない役割を果たしたと感ずる。中近東でコーランの教義から離れることの困難(というより危険)を考えればムハンマド皇太子の今後を私は期待したい。wishful thinkingと言われても。

2023年6月8日木曜日

マイナンバーカード導入の混乱

  マイナンバーカードの導入をめぐって混乱が惹起されている。我が家は同カードをかなり以前に取得したが、紛失や悪用を恐れて運転免許証で済むことはそれで代用するので、利用は最小限にとどめている。

 そもそもAIの知識が乏しいので現在メディアで政府の失態と報道されている事柄の正確な理解もできない。しかし、我々高齢者の便不便にも配慮してほしいが、アジアでも中国や韓国では現金に代わるカード支払いは日本の比ではないと聞くと、将来必要な施策なら批判を恐れずに進めてほしいとも思う。

 現在のところ、デジタル担当相の河野太郎氏が不具合への批判を浴びている。私は河野氏を一部で期待されているほどの自民党の星だとは思わない。防衛相当時、(新潟県はともかく)山口県へのイージス・アショアの地上配備計画を性急に引っ込めて艦上配備に変更した事で、費用の面でも実現可能性の面でも混迷を生んでいる。ただ、マイナンバーカード導入問題に限れば、私は同情的である。新しい施策の導入には一定程度の混乱は避けて通れない。AI化に後れをとっては国益に反するとの信念があるなら、批判にたじろがないで欲しい。

2023年6月2日金曜日

日本女性の社会進出

  最近(だけでもないが)、政治の世界を先頭に我が国の各界の女性の進出度の低さが問題視されている。じじつ、先頃のG7のリーダーには女性が2人加わっていた事実は我々の目にも新鮮に映った。

 今朝の『読売』に「世界大学ランキング2023」に基づき世界の有名5大学の女子学生の比率が紹介されている。1 オクスフォード(男子52% 女子48%)  2 ハーバード(50% 50%)  3 ケンブリッジ(53% 47%)  4  スタンフォード(54% 46%)   5  マサチューセッツ工科大( 78% 22%)である。東京大学は今年初めて女子入学者の割合が20%を上回り、21.8%とのこと。我が国の女子入学者の割合が少ないことは明白だが、オクスフォード大とケンブリッジ大の場合、30前後のカレッジの総称であり、それぞれが数校の女子カレッジを含むことを指摘すべきである。比べるなら東京大学と最低限お茶の水女子大の合計の女子比率を比較すべきである。なお、記事は比率の低い理由として地方の女子の場合、保護者や地域の意向を挙げる。

 それにしても我が国の女性の社会進出 (とりわけ政治の)  が低いことは否めない。それでも日本の先進地域?のJR中央線の沿線では武蔵野市の女性市長に続き、今回の地方議会選で杉並区の区議は女性議員が多数となった。日本の原水爆禁止運動の発祥地の面目躍如というべきか。

 

2023年5月30日火曜日

首相官邸あれこれ

  岸田首相の秘書官を務める長男が首相公邸で親族と?  羽目を外して更迭された。実質罷免と言える。罷免に値するかどうかはともかく、なんとも軽い人柄で秘書官が適任とは思えない。たしか、2.26事件の凶行の場にもなった建物で、公的機能の大半は新しい官邸に引き継がれているが、一部は残っていたようだ。私はむろん公邸内部をみたことはない。  未だ官邸だった時代に中国人の若い同業者を乗せて都心案内のため官邸前を通ったことがある。あれがPrime Minister's Residenseだと説明したら、How small !と驚かれた。何でも巨大なものが好きな中国人には驚きだったのだろう。

 しかし、旧官邸が大きくないと言っても、外見では英国首相の官 邸( 住所名でDowning10とも呼ぶ)は一般の住居と見紛うばかりである(内部は広大とか)。留学時に学界の大先輩(恩師ではない)を官邸前に案内したことがある。見物は3度目ぐらいだったが初めて表札を読んだら大蔵大臣( first lord of treasury)となっている。そんな筈はないと思ったが、間違えたら先輩に失礼千万なので立番の警官に恥を忍んでPrime Minister's House ?と聞いたらYes Sirと返された。すると大先輩が、そういえば恩師のI先生に英国首相はむかし大蔵第一卿と呼ばれたと習ったとのこと。もっと早く思い出して欲しかった! なお現在はテロを恐れて官邸直前までは入れないようだ。昔をいまになすよしもがな.............。

訂正

 前々回に我が家のゴーヤーの調理を記したとき、 ゴマと鰹節と少量の酢も加えているとの家人の指摘があった。  訂正します。

2023年5月24日水曜日

広島サミットの評価は..........

  広島で開催されたG7サミットが終了した。秘話というほどではないが、その舞台裏の一端も明らかになってきた。メディアの世論調査によれば会議を主宰した岸田首相の評価も上昇気味らしいが、個人や政党にとってどうこうよりも被爆地広島に光が当たったことが何より喜ばしい。

 むろん全てが良かったと言うつもりはない。とりわけ原爆の全面禁止を訴えてきて人たちにとっては核兵器の戦争抑止効果を是認したと解せられる宣言は納得しがたいだろう。しかし私は日本人も人類全体も香港人の悲運を肝に銘じなければならないということを第一に考えたい。

 何よりも世界のリーダーたちが原爆資料館を視察したことを重視したい。百聞は一見にしかずの諺どうり、遺品や写真による見聞でも原爆の印象は強烈である。たった40分の視察という感想もあろうが、それでもオバマ大統領の10分と比べれば進歩である(10分とはいえ先例を作ったオバマ氏には感謝する)。 

 ゼレンスキー大統領の同時訪問はある意味でG7サミットの広島開催の意義から世界の関心を「ハイジャック」するものだった。広島訪問が、「勝利するまで戦う」との彼の決意が含む危険を彼に認識させただろうか?  そうであれば良いが.............。

2023年5月22日月曜日

ゴーヤー礼讃

  昨夜の『ポツンと一軒家』を今日録画で見た。今週の訪問先は嘗て百軒が住んだ山村だがダム建設のため現在は一軒のみ。それも定住はせず、仲間とのリクリエーション(猪狩り!)を中心に使われているというものだった。

 エピソード自体も面白かったが私が気になったのは途中で道を聞いた農家のキュウリ栽培だった。キュウリが真っ直ぐで表面がつるつるのものばかりとなって久しい。昔の曲がって粉を吹いたようなキュウリの方が私には美味しく感ぜられるが、単なる郷愁なのか。大量生産大量輸送のためにはキュウリは曲がってほしくないのだろうか。

 私はそもそも野菜があまり好きではないし、微妙な味の差が分からない。それでも最近の例外はゴーヤー。もともと沖縄原産なので我が家で食するようになって10年になったかどうか。醤油と砂糖で味付けされるだけでも好きになり、昨年は居間の日除けを兼ねて初めて庭に苗を植えた。たった一本だけなので量は期待していなかったが、最盛期には1日おきぐらいに収穫でき、大満足だった。そこで今年は欲張って2本植えた。皮算用では毎日一個収穫できることとなり、いくら好きでも対応できなくなるかも。そうなればご近所に配ればよいと考えている。しかし、好まれるかは分からない。

2023年5月21日日曜日

訂正

  前回、ヴェルレーヌの詩の鈴木信太郎訳を「都に雨の降るごとく わが心にも雨ぞ降る」と記したが、正しくは「我が心にも涙降る」。小生の記憶違い。私は知らなかったが堀口大学の訳「巷に雨の降るごとく 我が心にも涙降る」がやはり名訳として知られている由。 荷風の文中の訳と堀口大学訳の前後関係はわからないが、 荷風はフランス語が達者だった。

2023年5月19日金曜日

「花より雨に」

 昼食後、瞼が重くなり、1時間ほど昼寝した(ほとんど恒例)。 目覚めたら家人がその間激しい雨があったという。天気予報通りなので驚きはなかったが、いよいよ梅雨の季節になったのか。早すぎる気もするが、これも地球温暖化のせいなのか?

 高校時代の国語教科書に永井荷風の「花より雨に」という文章が載っていた。 4月から6月頃の同家の庭の変化を描いた文章で、その頃は荷風が大変な名文家であることは知らなかったが、快く読んだ記憶はある。その文章の中でフランスの詩人ヴェルレーヌの有名な詩の一節が「巷に雨の降るごとく、我が心にぞ涙降る.............」と訳されていた。もちろん私には初めて知る詩で、のちに鈴木信太郎氏の名訳「都に雨の降るごとく 我が心にも雨ぞ降る..........」で名詩全文を知った。

 私の知っている外国の詩など、唐詩を別にすればおそらく10詩を大きくは超えない。そもそも詩を翻訳で読んでどれだけ原詩を味わえたといえるのか私には分からない。しかし、100%でなくとも名訳者がいれば感動は伝わると信じたい。

2023年5月12日金曜日

水質改善をしたら...........

  昨日だったか、テレビで瀬戸内海の養殖中の海苔がクロダイ(チヌ)に食べられ大きな被害を蒙っていると知った。海苔は私も好物なので困ったことだと感じた。今朝の『毎日』に同じテーマの記事が載った。 クロダイの餌はフジツボが主だが、瀬戸内海の浄化が進んだためフジツボが減少し、困ったクロダイが養殖網の海苔を食してしまうのこと。

 素人考えでは、クロダイは色こそ違えタイそっくりなので商品として売れると考えた。しかし、味は劣らないのだが鮮度が落ちやすいので漁師は市場に出荷しないとのこと。

 わが国経済の高度成長期、 瀬戸内海の水質汚染が現地では大きな問題となっていた。私の高校時代の友人はその汚染源とされる水島工業地帯の大製鉄工場の技師だったので、本当に心苦しいと語っていた。ところが最近は水質浄化が進み、アサリなどの貝類が不作になったとメディアを通じて知っていたが、海苔までとは.............。

   冷凍技術の発達のおかげか、外国産とおぼしきカニの広告が再三再四新聞に載る時代に自国のクロダイを利用しないとは。やはり飽食の時代なのか。

2023年5月5日金曜日

子どもの幸不幸

  こどもの日にちなんでか、『朝日』の「天声人語」は芥川龍之介の短編小説『河童』の一節を紹介している。河童の世界では父親が母親のおなかの子どもに「生まれたいか」と聞き、「生まれたくない」との返事ならお産は取りやめとなる。続けて天声人語子は現代の日本を、「7人に1人の子どもが貧困に苦しむ。虐待があり、いじめがあり、若者の高い自殺率がある」と続ける。

 戦争を子どもとして経験した私からすれば、どうして現代の子どもの状況をそんなに暗く描くのかと言いたくなる。雑炊にかき卵が入っているのを喜んだ時代。私の入った防空壕が1トン爆弾で揺れ、家内は焼夷弾に逃げまどった(自宅全焼)時代。 虐待やいじめはいつの時代にもあった。中学時代の草野球の当初は布グローブも多かった。田舎でも弁当がふかし芋の生徒がいた。

 ただ、塾や習い事は習字とそろばん以外は例外だった時代、 私立中学入学のための勉強は稀だった時代と現代の子どもとどちらが幸せかと問われれば何とも言えない。韓国や中国、とくに前者の入試競争や入社競争に至っては少子化の一因ともいわれる(自殺率と少子化は密接な関係があるのでは?)。それでも、藩の重役の子と下級武士の子の将来の差に福沢諭吉が怒った時代と比べればやはり進歩なのだろう。今後とも子供にとっての機会均等をいっそう進めることに反対の余地はない。

2023年4月30日日曜日

正義を使い分けるメディア

 今日の 朝日新聞に「私たちの言論は自由か」「抑圧され はびこる萎縮」との見出しで、2頁にわたる論評記事が載っている。だが、萎縮に関してメディアは責任は無いだろうか。

 最近、ジャニーズ事務所のボスの性犯罪が次々と報道されている。メディアがこれまで知らなかったなどとは思えない。しかも既に20年前に問題化し、裁判所は刑には服させなかったが犯罪事実は認定していたとのこと。当時、メディアが広く報道していたら今回の被害はずっと稀だったに違いない。民放テレビ(大抵は新聞社系)はジャニーズ事務所を敵にしたくなかったと解するほかない。

 もう覚えている人は少ないだろうが、1974年の「八鹿(ようか)高校事件」(ブリタニカ社と平凡社の百科事典に項目あり)を思い出す。当時、部落解放同盟の差別糾弾闘争は激しさを増していた。兵庫県の八鹿高校の生徒たちが差別研究会設立を要求してハンストに入ったのに対し、学校側が応じなかったことが原因となり、解放同盟員が教員たちを監禁し負傷させた。しかし、メディアは「糾弾闘争」を恐れてか曖昧な態度をとった。この明白な犯罪に対し政党も共産党以外は逃げ腰だった(その後、解放同盟側も反省し、激しい糾弾闘争はおさまった)。

 結局のところ、新聞中心のメディアは自社の経営に悪影響を及ぼす恐れがある場合は、本気で被害者の側に立つ気はないとしか思えない。

2023年4月25日火曜日

福祉申請の手続きの面倒

 腰痛の治療をある専門クリニックで受けたが、一向に良くならないので別のクリニックで治療することにした。変更先でこれまでの経過を聞かれたので止むを得ずこれ迄のクリニックの名を挙げた。同じ市内のいわばライバルの名であり、当然対抗心を持ったのだろう。これまでは市販のコルセットを使用していたが、今度はほとんど有無をいわせず小生の体の寸法をきちんと計測し、一週後までに現物を用意するという。その代わり実費の8割までの高齢者補助があるという。

 さすが福祉国家日本と感心したが、そのための申請書類が5種必要になった。4種目の本人確認の書類は運転免許証かマイナンバーカードの写しとあるが、5番目の書類は「被保険者のマイナンバーが分かるもののコピー」とある。これでは4番目の項目は無意味ではないのか?

 最近、 生活困難者なのに生活保護の申請をしないケースが少なくないと聞く。主な忌避の理由は親族の収入調査の要求とメディアは告げる。しかし、それだけなのか。コルセット一個の実費援助に署名書類が5枚必要なら生活保護の申請には何枚必要になるのか。手続きの面倒さも申請を断念させる理由の一つなのではないか。そう思うのは私が超高齢?のせいなのか。

2023年4月18日火曜日

今日の各紙から

  月曜日は各紙の世論調査の結果が発表される日のようで、今日は『読売』と『毎日』の調査結果が載っている。内閣支持率については『読売』は支持47%、不支持37%。 『毎日』は支持36%、不支持59%だった。なるほど、両紙の政治的立場を反映していると一瞬思ったが、考えてみればこれは両紙の読者の数字ではなく、国民対象の結果の数字である。それがこれほど違うとは.....。新聞の世論調査の数字とはその程度のものなのか。

 日本の学術会議と政府の間の対立が前内閣時代から続いており、今回あらためて学術会議法の改正をめぐって『朝日』が1ページ全面を使って学術会議支持の論陣を張っている。それに対して『読売』が小さい扱いなのは予想通りと言える。しかし、『朝日』が学術会議が一丸となって反対しているかのように描いている一方、『読売』によると「政府とのコミュニケーションを続ける必要がある」との意見も出たとのこと。 婉曲な表現ながら『朝日』の伝えるほど反対一色でないことを示している。また、『朝日』によると日本のノーベル賞受賞者8人の反対声明に対して各国のノーベル賞受賞者61名が賛成を表明したとのこと。しかし、それらの国の中で日本の学術会議のように軍事技術の研究を禁じている国が一国でもあるのだろうか?

 

2023年4月14日金曜日

大阪のIR計画に賛成!

  大阪にカジノを中心とした「統合型リゾート」(ほかに国際会議場やホテルなど)を建設するIR計画がいよいよ認められるという。それに対して国民の射倖心を煽るとの反対論も根強い。私は計画に賛成である。

 理由の第一は東京へのますます進む一極集中の危うさである。我が国ほどの規模の国家なら少なくとも複数の中心があることが望ましく、また健全だと思う。関東大震災以来、南関東は巨大災害を経験していない。その間、地下水の汲み上げで地盤は沈下しており、逆に温暖化で海水面は上昇している。いったん大地震や大暴風が襲えばその被害は半端ではないだろう。京阪神の経済力の涵養は欠かせない。

 カジノが国民の射倖心を煽る可能性は無論絶無ではない。しかし、シンガポールなどの統合リゾートは一部の金持ち以外の庶民がそこで散財する場所ではない。私は勧められてラスベガスのカジノをのぞいたことがあるが、けっきょくパチンコのようなもので遊んだだけ。それ以上奥に進む勇気など一庶民には無かった。

 射倖心を理由にカジノに反対する人たちはなぜパチンコに反対しないのか? カジノよりもはるかに参加しやすく、事実その魔力に囚われて犯罪に疾ったり、それほどでなくとも家庭崩壊を起こす例はパチンコが圧倒的ではないか。もちろん庶民の気晴らしの場はあってよいが、現在のような野放し状態を放置してIR計画に反対する人たちを私は理解できない。

2023年4月9日日曜日

必要な値上げは認められるべき

今朝の『朝日』の経済欄『フロントライン』は最近の私鉄各社の運賃値上げを報じている。 値上げの直接のキッカケはコロナ禍による乗客数の減少である。しかしコロナの流行が下火になってもそれをキッカケとする「在宅勤務へのシフト」のため乗客数は旧に復していないという。

 コロナ禍の影響に限らず、最近は各社ともホームドアの設置を進めている。そうした状況下で私は運賃値上げはやむを得ないし、説明以上の弁解をする必要などない当然の権利だと思う。 

 私が都心に出るとき利用する私鉄は戦前戦後の路面電車タイプの車体から、いまや8〜10輌の連結車両で、通勤時の混雑を除けば利便性は大幅に向上している。その間、高架化計画を一部取りやめるとの理由で運賃を1割ほど下げたこともあった。

 事は鉄道だけではない。卵を始めとする食料品から電気やガスの料金などこのところの値上げ攻勢は痛いが、諸外国の生活費の値上がりと比較すればそれほどではない。値上げ一般とは少し違うが、米国などではイベント開催地のホテルの宿泊料金は通常の数倍になったりするという。我が国でも一定の特別料金期間は当然あるだろうが、数倍などに上げたら悪評が残るのでは? 我が国では「商人道」といったものがまだ影響力を残していると思う。

2023年4月7日金曜日

カード社会化は誰の利益か?

  銀行預金の出し入れは別とし、私はカードは交通機関用のPASMOとガソリン給油用以外はあまり使わない。頭が古いので紛失して誰かに悪用されないかと思ってしまう。しかし、政府は経済のAI化の推進は必要だと言うし、小売商店などは釣り銭を用意する手間は省けるので、カード社会化に協力しない自分をちょっぴりだが心苦しく思っていた。しかし、今朝の『毎日』の投書欄『みんなの広場』の「キャッシュレスよりも現金で」を読んで何が何だか分からなくなった。

 小商店主の投稿者によれば、カード決済は「結局はツケです。入金は1ヶ月近く後になることもあります。ツケがきちんと支払われたか、入金チェックは大変です」。その上、カード会社への使用手数料もかかる。「いいことはひとつもないのが実感」とのこと。

 これは一体どういうことなのか。経営規模の大小で利便性は逆になるのか?  これまで私は政府は税金額を把握しやすくするためカード化を推奨するのかと推測(邪推)してきたが、そうした効用はあるのか?  どんな施策にも利益不利益はあると割り切るべきなのか?  零細企業の不利益はやむを得ないのか?  ともあれ私はますます現金支払い主義者になりそうだ。

2023年4月1日土曜日

戦争を終わらせることの難しさ

 ロシアとウクライナの間の戦争が大方の予想を超えて満一年続いている。通常なら弱い側が敗北して終わるだろう。しかし、今回のように比較すれば明らかに弱い側のウクライナでもNATO諸国の支援があれば戦争継続は不可能ではない。逆にロシアの側も面目からも小国ウクライナに負けるわけにはいくまい。
 それでも双方とも限りなく戦争を続けることは出来ない。一方のウクライナについてはNATO側の支援疲れになればウクライナはいかに不服でも戦争を続けられまい。他方、ロシアもウクライナに負ければプーチンの面目丸つぶれとなる。かといって国民の声が彼を退陣させる可能性は大きくない。となれば双方がどこかで妥協するしかない。NATOはウクライナをけしかけてはならない事はもちろんである。
 思えば1914年、オーストリア皇太子がセルビア青年の銃弾に倒れたときそれが何年も続く大戦のきっかけとなると思った人は少なかった。しかし戦争に双方の威信がかかったら誰も止められなくなった。
 当時と比べれば人類も賢くなったと思いたい。まして今回は原水爆という世界を荒廃させかねない手段を人類は手に入れている。ウクライナもロシアも勝利を目指してはならない。

2023年3月30日木曜日

山笑う季節の到来

  地球温暖化の影響か、もう東京の桜は満開だ。それだけでなく林の木々も芽吹き始め美しい。この季節になると必ず思い出す人がいる。

 30年近く前になるがソウル大学教授を定年後、私の勤務校の別のキャンパスで西洋史を教えていた韓国人の李さんは日本帝国時代に平壌に生まれた。氏を日本に呼んだ私の親友から、自分が一年間在外研究(ドイツ)するため気に掛けてくれと依頼された。とりあえず新宿の料理屋で、私の後輩の西洋史の同僚と李さんと顔合わせした。すると別の部屋で「平壌中学」出身者の会が開かれていたのでその旨告げたら「あれは日本人が入学する平壌中学です」と返されたのでちょっと気まずい思いをした。しかし李さんは親日家で、昔の日本人の恩師を新聞の「尋ね人欄」で探し出し再開した。しかし同じように日本人の恩師を慕ったと聞く金大中氏を嫌っていた。金日成時代の北朝鮮を肌で知る氏は金大中氏の政治姿勢が許せなかったのである。

 前置きが長くなったが、日本語が達者な李さんも「山笑う」という表現は知らないというので新緑の奥多摩に案内して以来、日帰りドライブに何回も誘った。単身赴任の李さんはもちろん喜んで同行した。韓国にも是非とも来てほしいとの氏の願いに応ずるのは簡単ではなかったが、のち拒みがたくソウルで再会した。他に応募者がなかった韓国ツアーで各地を訪ね、「冬ソナ」のロケ地の南胎島など楽しかった。もう李さんも氏を日本に招いた親友もこの世の人ではないが、「山笑う」季節だけは変わりなく巡ってくる。

2023年3月27日月曜日

行く春を病いとともに惜しみけり?

 季節の変わり目には身体の変調に見舞われるという。それと関係するかどうかは素人にはわからないが、せっかくの美しい季節を十分に祝えないでいる。

 老齢になり、他人事と思っていた花粉症が無縁でなくなった。それでもここ数年は薬を予防的に飲むことで発生を未然に防いでいたが、今年は花粉の量が特別多いためか目と鼻が不調になった。クリニックの指定した薬で症状が軽減したと思ったら一週間ほど前に腰痛が再発した。狭窄症ではなくヘルニアという病名で3種の錠剤と貼り薬で凌いでいるが病状が改善したという実感はない。車の運転は腰部が固定されるためか差し支えないが、それでも中長距離となると臆してしまう。さいわい自宅周辺の桜が半世紀間に大木になったのでそれを眺めて病気の回復を待つつもり。なぜか例年以上に桜花を美しいと感ずるのは負け惜しみか?

  

2023年3月21日火曜日

イラク戦争..........20年のち

 今年がイラク戦争勃発20年ということで新聞各紙に回顧記事が載っている。そこではこの戦争への反省が圧倒的であるのは自然だが、それでは同じ過ちはもう起こらないと断言できるだろうか。

 誘因となった米国同時多発テロ事件はやはり衝撃的であり、米国でイスラム教徒への報復感情が激発したのは無理からぬところがあった。しかし、事件は本来宗教過激派が起こしたものであり、フセイン支配下のイラクはスンニ派主体だったとはいえ、世俗主義国家ではあった。無論そこでのクルド族やシーア派への抑圧は甚だしいものがあった。当時在米のイラク人の「我々はイラクが他の中東諸国並みになってほしいだけなのだ」との訴えには私は深く心を動かされた。 

 しかし、フセイン打倒後のイラクは期待されたような人権尊重国家にはほど遠かった。国内が相譲らぬ二大宗派や複数民族に分かれている国家の場合、脱宗派的政治を期待することは難しい。米国の先見の明のなさは否定できない。しかし私は事後の知恵で米国を批判する人たちの列に加わりたくない。

 先週、これまで激しく対立してきたスンニ派の大国サウジアラビアとシーア派の大国イランが話し合いを始めると発表された。両宗派のある限り中東に流血を伴う緊張は絶えなかった。両国はこの緊張緩和の機会を逃さぬよう英知を働かせてほしい。

2023年3月16日木曜日

子育て支援問題の難しさ

  このブログの読者の平均年齢からすれば強い関心は持てないだろうが、現在の我が国の政治の争点の一つが子育て支援問題である。むろん国庫に余裕があれば大いに援助すればよいのだが、限られた(しかも多額の国債発行で万年赤字を糊塗している)予算からどの程度の金額を振り向けるかは難しい問題である。

 かつては子育て支援といえば日本育英会の奨学金が中心だった。私自身は親の収入の関係で受けたことはなかった(恵まれた学生だったと言われそうだが、一緒に上京した同級生たちが入学後学寮生活を満喫していたのに私にその資格が無いのはけっこう辛いことだった)。その後、育英会の奨学金は受給人数も金額も拡大したが、さらに低年齢者に支給を拡大する上での条件が与野党間の争点のようだ。

 支給条件の拡大についてとりわけ与野党間でもめているのはやはり、親の収入が多額な生徒は除外すべきか否かということ。高所得者の子弟は排除されて当然と考える人は私を含めて多かろう。しかし今朝の『朝日』に比較的高収入だが子供が3人いる親が、所得差による区別を不公平だと訴えている。なるほど同じ収入でも子供の数が多ければ除外に不満を感じて当然かもしれない。現在の日本の家庭の子ども数の平均が1.3人と聞けば、この人は、我が国の将来のため平均以上に貢献していることを評価されてよいとも言える。

2023年3月14日火曜日

WBCで日本チームが四連勝

 WBCで日本代表チームが予選を4連勝し準決勝戦に向かう事となった。翌日のテレビは全局と言ってよいほどその話題で持ちきりだった(新聞休刊日だったし)。私は今回のWBCに、日本の若者の関心をサッカーから野球に引き戻したいとの暗い期待?を抱いていたのでこれ以上の結果はない。

 球場での観戦者は選ばれた大変幸運な人たちらしいが、一度に日本の全チームの花形選手たちの活躍をを見ることができるのだからうらやましい。しかし私の推測に過ぎないが、観衆の半ば以上は大谷翔平のプレイを見に来たのではないか? なにしろこうした機会でなければ彼の活躍は渡米しなければ見れないのだから。

 大谷は第一戦から第三戦までもそこそこに活躍していたが、彼のウリでもあるホームランは無かった。しかし、対オーストラリア戦の初回待望のホームランを放った。翌日のテレビでは彼が打球のスタンド入りを確信して打席から一歩も動かない事実が再三再四指摘された。彼ほどの打者なら感触でスタンド入りを確信出来たのだろう。

 そのホームランボールは当然に客席での奪い合いとなったが、意外にも若い女性のものとなった。すると隣の観客がそのボールを借りてスマホ撮影し、さらに数人が同じことをした。それを伝えたテレビで、米国のスポーツ関係者が米国では考えられないと断言した。なにしろ百万円単位、もしかしたら一千万円近い価値がある記念品であり、米国なら持ち逃げを恐れるのが当然なのだろう。持ち主の女性も一瞬は心配したかもしれないが、隣席のファンの要望を拒まなかった。願わくばそのショットが世界に拡散したことを.............。

訂正  数回前の本ブログで、ドイツやイタリアは米国の要請に応じてアフガニスタンに派兵し、それぞれ数百人の死者を出したと書いた。しかし、ドイツに関して数十人の死者との報道もあり、派兵総数1450人ならそちらの方が正しいかも。ひとまず訂正します。イタリアもドイツ以上ではないだろう。

2023年3月6日月曜日

東京マラソンに想う

  昨日3年ぶり(正常な形では4年ぶり?)に東京マラソンが開催された。私は苦しい事と痛みが大嫌いなので、瀬古や中山が輝いていた時代ほどにはマラソンに関心が持てず、今回も放送はスタート時しか見ていないが、大群集?が一斉にスタートするのを見てその人気に驚いた。それでも出場者は何倍もの選考をパスした人たちだと聞く。

 今朝の新聞による結果は、日本人男子のトップは7位の山下、女子は6位の松田。上位は男女とも3位までエチオピア選手。 オリンピックなどで陸上競技の短距離も長距離もアフリカ勢が強いことは知っていたが、やはりと言うべきか。7位でも日本人歴代3位と大書しなければならないとは.............。

 むかしニューヨークでタクシーをつかまえたら運転手がエチオピア人だった。アベベを知っているかと聞かれたので無論知っていると答えたら彼は有頂天になり、運転は大丈夫かと不安に駆られた。アフリカ系の中でもエチオピア人が長距離を得意とするのは国土の相当部分が高地だからと聞く。

 スポーツ競技が世界大に拡大するにつれ発祥地の国民の優位が崩れるのは天命だろう。冬季オリンピックのスキーの「回転」競技で猪谷千春が日本人として初めて銀メダルを取った(コルチナダンペッツオ大会)とき私が感じた喜びは今の若い人たちには理解できないかも。

 逆に嘗ての日本人の御家芸だった柔道は去年のオリンピックでは好成績だったが、将来は楽観できない(なにしろ柔道の競技人口はフランスが上だとか)。もはや発祥国だからと選手に重圧をかけるべきではない。

2023年2月28日火曜日

「新たなキューバ危機」

  今朝のNHKのテレビニュースで最近のキューバの状況を、「人口流失300万人 新たなキューバ危機」という見出しで放映していた。「新たなキューバ危機」とは1962年のキューバ・ミサイル危機をもじったタイトルであることは勿論だろう。番組は最近のキューバ情勢を紹介しており、興味深かった。

 第二次世界大戦後のキューバやカリブ海沿岸諸国は米国資本のもとプランテーション農業とも呼ばれた単一商品作物栽培(フルーツや砂糖キビなど)に集中し自国の経済発展を歪められていると左翼の批判を受けていた。それもあり、キューバのバティスタ独裁政権を武力で打倒した「カストロ革命」は当初は米国メディアの一部からも好意的に扱われた。しかし、新政権が旧政権の幹部らを死刑にしたり、米国を批判してソ連との結びつきを強めるにつれ両国関係は悪化した。その間、キューバは砂糖キビ単一栽培を是正しようとして失敗した。世界で最も砂糖キビ栽培に適した土地でのモノカルチャーは合理的だったのである。

 現在のキューバの政治体制への失望から米国へのキューバ人の亡命が絶えないとは聞いていた。番組では、かつては世界の強豪チームだったキューバ野球は選手が米国の高給に惹かれて亡命し今は見る影もないと伝えていた。米国のスポーツ選手の並外れた高給には私自身好感は持てないし、カストロ時代のキューバは医学教育に力を入れ、多くの医師が発展途上国の医療を助けたとも聞く。悪いことばかりではないと思いたいが、人口1100万人余りの国家からの300万人の流失は失敗国家と言うほかない。

2023年2月21日火曜日

戦争を終わらせる難しさ

  漫画家の松本零士氏が85歳で死去された。私は氏の『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』の原作を読んでいないし、テレビアニメも映画もおそらく見ていない。この機会にテレビで再演されたら是非見たい(欲張りめ!)。しかし、氏の経歴に父君が福岡県の太刀洗の陸軍飛行学校の教官だったとあり、変な言い方だが懐かしさを禁じ得なかった。

 戦前の日本の空軍力は陸軍と海軍にハッキリ分かれていた。したがってその養成機関も陸軍の太刀洗と海軍の霞ヶ浦に分かれていた。特攻隊の出撃基地として有名な知覧は実は陸軍のそれであり、海軍の出撃基地は大隈半島の鹿屋だった。

 霞ヶ浦基地は「海軍飛行予科練習生」(通称は予科練)の所在地としてその名は『若鷲の歌』(通称は『予科練の歌』)に残り、当時の小学生なら誰でも知りかつ歌った。それに対して太刀洗基地にも『特別幹部候補生の歌』(通称『特幹』の歌)があったが、戦後はほとんど忘れられ、よく歌った私も「.............風も鎮まる太刀洗 ああ特幹の太刀洗」とキレ切れにしか記憶しない」(ご記憶の方はぜひご教示を!)。

 歌に罪はないし、松本零士氏の父君も当時の帝国軍人として当然のことをしたまでだろう。それでも多数の教え子を死地に追いやったとの思いは戦後はきっとあったろう。あそこまで戦わなくともと現在の私たちは思うが、ウクライナ紛争も一年後も終わりそうにない。人間の業なのか。なお、神風特攻隊は当初は「しんぷう」と呼ばれたとのこと。

2023年2月17日金曜日

もう「サクラ咲く」

  午後テレビのスイッチを入れたら東京は未だ寒さ厳しいのに桜見物の場面が映ったので驚いた。河津桜の季節がもう始まっていたのである。私は4度ほど訪れているが車を停めて見られたのは2回だけ。土曜日曜は駐車困難なので河津川の対岸から眺めた。

 メディア的にはともかく、日本一の早咲き桜はやはり沖縄の八重岳(453米)であり、1月下旬から咲き始める。ここの特色は頂上まで通じている車道を登るにつれ早く咲いていること(普通は吉野山のように頂上に近いほど遅咲きである)。桜の開花は最も低温のときからの日数によるとは聞いてはいたが、経験してみると妙な感覚だった。

 桜花といっても人により種類の好みはあろう。私の好みを言えば染井吉野はもう少しピンクが強い方が良い。従って山桜をより好む。東北地方の山中に咲く紅山桜が一番のお気に入りだが、人目に立ちにくい場所で良くぞ咲いているとの同情がより美しく見せるのかも知れない。

 我が国の桜の美しさは早くから海外でも知られているようだが、交通機関の発達により来日してその美に直接触れる人が増加しつつあるのは何より喜ばしい。

2023年2月15日水曜日

 農業の工業化

 我が家から数キロ離れた多摩動物公園で鳥インフルエンザに罹った鳥が発見され、公園全体が休園となった。高齢の我が家は困らないが、休園が長びけば春休みにも及び、子供のいる家庭の中には失望するケースもあるだろう。

 動物園の鳥と違うが、採卵用の鶏の大量死が続いている。それも1箇所で100万羽を超える大量処分が発生しており、全国ではいまや1000万羽を超え、我が国の採卵鶏の1割に達するとのこと。その殺処分や拡大防止のための活動に必要とされる多大の労働量もさることながら、消費者としては鶏卵の値上がりが心配である。 

 こうした事態の発生により我々に明らかとなったのは「農業の工業化」とでも呼ぶべき事態である。鶏への給餌は勿論、卵も溝に転がり出るよう鶏舎が設計されている。そうでなければ一施設で何十万羽も飼える筈がない。鶏だけではない。牛の飼育農家の効率化も同様であり、搾乳も給餌も実情は工場に近い。そしてこちらは飼料の値上がりにより大きな打撃を受けている。

 病気による鶏卵の値上がりは我々は甘受するほかない。これに対して畜産農家の苦境はウクライナ戦争による飼料の不足や値上がりによる。「工業化」の意外な弱点である。戦争の愚かさの伝承が世代を越えることの難しさをあらためて感じさせられる。

2023年2月10日金曜日

「時代の正義」への違和感

 岸田首相の秘書官がLGBTの人との同席は気持ちが悪いといった主旨の発言をし、多様性を重視する内閣の方針に合わないとして罷免された。私はLGBTの人と同席した経験は無い(多分)が、テレビ出演者などでLGBTをウリにしている人にとくに違和感を感じないし、人それぞれと思う程度である。多様性の尊重は当然のことと考える。

 しかし、90年近い人生の中で私は「時代の正義」を幾度か見聞した。戦時中は「皇国日本」、戦後は「ソ連平和勢力論」や「反安保」。 ハンガリーやチェコスロバキアの自主性要求を戦車で葬った旧ソ連を現在平和愛好国だとは誰も言わないだろうし、今は野党といえども「安保廃棄」とは言わなくなった。私が多様性の尊重といえども他人に押し付ける気になれないのは、そうした「時代の正義」を叫んだ人たちの反省の弁を稀にしか聞かなかったためもある。

 もうひとつ私の気に入らないのはオフレコの記者会見での発言が明かされ、問題とされていることである。公式の記者会見ではどうしてもタテマエの開陳となりがちで、ホンネはオフレコで明かされるという場合も多いのでは。そしてそれが有益である場合も。 オフレコの約束が破られることは長い目で見ればメディアにとって自縄自縛にならないだろうか。信義の問題も軽くはあるまい。

2023年2月8日水曜日

メンフィスの官許?殺人事件

 先日、エルビス・プレスリーの故郷のテネシー州のメンフィスで交通違反の黒人が逃亡を図り警官に殴り殺された。殺した側の警官5人はすべて黒人だった。もし警官が白人だったらミネアポリスのジョージ・フロイド死亡事件時を上回る人種暴動となっていただろう。

 日本人に理解困難なのは今回の事件の発端が軽微な交通違反だったと伝えられていること。 たとえ逃亡を図ったとしても撲殺に値するほどの犯罪とは思えない。メンフィスが全米で五指に入る犯罪都市だとしても。そもそも犯罪に対する対抗暴力の許容度が日本とは比較にならないほど緩いと言わざるを得ない。

 書名は忘れたが亡くなった米国研究家の猿谷要氏の指摘に米国社会の暴力性があった。最近も米国の学校での銃による殺人事件が絶えない。それでも対抗策の強化は形だけとしか思えない。未だに銃で武装する権利を手放す気配がない。西部劇の時代ではないのに.............。広大な領土、複雑な人種構成、州権の残存など、我が国とは違いすぎる環境が個人による処罰が異常と思わない精神状態を残させているのだろう。

 最近、米国を含む外国への日本人の移住者が増加していると聞く。老齢の私などには理解できないが、安全だが周囲に気を使うことの少なくない我が国に若者が魅力を感じないのは自然なことなのか。ともあれその積極性は評価したい。

2023年2月6日月曜日

サーモンが環境問題になる時代

  朝のNHKのニュースで「世界的サーモン人気 産地チリで環境議論に」との話題を取りあげていた。養殖の鮭が「サーモン」と特別に区別して呼ばれ、寿司ダネとして利用されていることはむろん知っていた。天然の鮭には独自の寄生虫(細菌?)が潜んでいることも多く、いつからか生の鮭肉は敬遠され、養殖の「サーモン」に取って代わられた。

 南半球の鮭には元来そうした危険はないとのことで、半世紀ほど前から南米チリで大規模な鮭の養殖が始まり、最近30年間に30倍の生産額になって今や同国の第二の産業になっていた(第一は聞き漏らしたが、銅?)。ところが養殖があまりに大規模化し、養殖場の底に餌などがたまり不衛生なケースが増えたこと、養殖場の網を破って海に逃れた鮭が地元の魚を食べるため漁業者が被害を受けることなどで環境問題として問題化しているという。

 最近は観光地として日本の人気が高まり、「スシ」がその理由の一つとは聞いていた。チリにとっても新産業の発展は大歓迎だとばかり想像していたが、現地の政争も絡んでいるのかどうか、問題視されているとは.............。

  私も寿司は好きだし、本格的な寿司店以外にも簡単な寿司定食を提供するエキナカ店もでき、さらにスーパーではもっと手軽に入手できるようになって喜んでいた。寿司が世界の人たちに愛好されつつあると知り、愛国心をくすぐられていたのに.............。海中のプラスチックゴミも環境問題化しつつあるようだ。長生きすると聞きたくない話題が多くなる!

2023年2月5日日曜日

さっそく訂正!

 前回のブログの磯田道夫氏は道史氏の誤り。最近はこうした例にいとま無し!

富岡製糸場への道

 NHKのBS番組の『英雄たちの選択』シリーズは磯田道夫氏の軽妙な司会も楽しく、これまで半分近くは見ているが、1月25日は「ゼロから世界へ」というタイトルで徳川時代以来の我が国の生糸生産発展をテーマにしていた。
 私は日本経済史には素人なので生糸は日本古来の主要生産物と思ってきたが実は徳川中期までは海外からの輸入が主で、それの購入のため莫大な金銀が国外に流失していたという。そうした現状を新井白石が憂い、生糸生産の強化を唱えた。それに呼応した但馬の現養父市の上垣守国は西陣に上質生糸を納入する商人の身元を探り、東北の福島地方と知った。
 上垣は但馬地方の新知識独占を選ばず、『養蚕秘録』という著作で全国の養蚕業の進歩に多大の貢献をした。その結果、幕末までには日本産の生糸は世界から求められる輸出品となった。じつに日米開戦まで生糸は日本の輸出額の首位を譲ることはなかった(山本茂実『あゝ野麦峠』)。日本の工業化は製糸工女たちの作る生糸で支えられていたのである。
 番組の終わり近く、フランスの製糸技術を採り入れた富岡製糸場も紹介されていた。私も日本の産業遺産に指定後、学科の研修旅行で学生たちと訪れた。発足時にはじつに556人の工女たちが全国から集められ、誇りを持って働いたと番組で紹介されていた。当時としては負担の限界に近かったに相違ない金額で技術導入した明治政府の決断にはあらためて感じ入った。

2023年1月31日火曜日

 人智の結集による脱炭素を!

 自動車の世界販売台数でトヨタグループが3年連続首位となった。最近は半導体の供給が不足して自動車業界の生産にブレーキがかかっているとの報道がもっぱらだったので奇異に感じるが、同社の場合も国内生産台数の数%の減少を海外生産で補って0.1%にとどめているとか。第二位のフォルクスワーゲングループが前年比7.0%なのは同社が強い中国での生産減少のせいなのか。

 しかし、目下の世界自動車業界の最大の関心事はむろんCO2排出量の減少で、その対策の中心はEVとされ、トヨタを含む日本メーカーは欧米に後れを取っている。しかしこのブログに以前も書いたと記憶するが、EVが積載する重く大きなリチューム電池 の耐用年数が何年かも計算に入れない限りなんとも言えない。

 欧米は日本が得意なハイブリッド車(HV,PHV)の将来の輸入を禁止するという。しかし少し古いがある新聞報道(『毎日』11月7日)によると、国際エネルギー機関 (IEA)の調査では、製造過程までも含めた一台当たりCO2排出量(年間?)は、ガソリン車34トン、EVとHV28トン、PHVは24.5トンとのこと。EUが35年までにガソリン車全廃というのはEUで「世界の覇権を握る狙い」(同紙)と勘ぐりたくなる。

 やはり自分達が発明し発展させてきた商品には特別の愛着があるのは自然である。しかし寿命が尽きた時のバッテリーの処分(や資源としての再利用)の問題の解決までは複数路線で行くのが賢明ではないか?  最近はエンジンの燃料として水素ガスだけでなくアンモニアの燃料利用まで候補になっているとか。

2023年1月24日火曜日

科学技術の汎用性

  先日、駅に向かって歩いていたらコンビニの駐輪スペース(僅かに上り傾斜)にスクーターが駐車しようとして苦労していたので手を貸した。白髪の老人の加勢に若者は恐縮してくれたが、わたしの現在の力で押してもスクーターは前進しなかった。現在のスクーターがそんなに重いとは知らなかったのである。

 スクーターの起源はイタリアあたりか(『ローマの休日』)?。わが国では富士重工のラビットと三菱重工のピジョンがほぼ同時に登場した。まだ乗用車の本格的生産が始まる前でわたしは両社のスクーターが羨ましかった。どちらも日本を代表する航空機産業が米国に生産を禁止され、活路を先ずスクーター生産に求めたのである。やがてそれぞれが四輪車生産へと発展していった。

 昨夜のNHKの『映像の世紀』は前大戦で活躍した三菱重工の零戦と中島飛行機の隼(はやぶさ)を製作した技術者たちが戦後、胃カメラやロケットや戦後最初の国産機のYS-11や新幹線などの開発に身を入れ、日本の工業発達に貢献した事実を紹介していた。科学技術に軍用と民間用を隔てる垣根は低いということだろう。インターネット技術は当初は軍用技術だったと聞く。

 我が国の学術会議が軍事技術の研究者の参加を禁じていると聞く。しかし、国家の機関である学術会議が同じく国家機関である自衛隊向けの軍事技術研究を許さない理由がわたしにはよくわからない。

2023年1月19日木曜日

週刊誌の休刊

  今朝の各紙に『週刊朝日』が6月9日号をもって休刊になると報道された。昨年に創刊百年を迎えた我が国最古の週刊誌も最近の活字ジャーナリズムの不振と出版社系の週刊誌のセンセーショナリズムとの競争に勝てなかったのだろう。「悪貨は良貨を駆逐する」と言えるかは別とし、最盛期に150万部を超えていた(1958年)発行部数は最近は7万部となっていたという。最近同社の『アサヒカメラ』も休刊中だが、どちらも復刊は困難だろう。

 1950年代に『文藝春秋』の池島進平と『週刊朝日』の扇谷正造と『暮しの手帖』の花森安治の3人は名編集長の名をほしいままにしていた。わたしも学生時代から『週刊朝日』を毎号愛読し、英国留学時は読み古しを送ってもらっていた。吉永小百合が表紙写真の時はカレッジの食堂でわざとらしく広げて読んだりした。日本にも美女はいるんだぞ言いたかったのか。その後は彼女の進歩派的言動の連発にやや鼻白んでいるが!

 米国では同じように部数減少になやんだ『ニューヨーク・タイムズ』が、電子版の拡大で元気を取り戻したと聞くが、あくまで例外なのか?  新聞読みが楽しみの人間の未来は暗いのか!

2023年1月15日日曜日

ワシントンの日米協議

 ワシントンで日米首脳会談がおこなわれ、日本の「防衛強化をバイデン大統領が支持」した(『朝日』)。他紙の報道は予想通り『読売』と『産経』が批判を加えずに報じ、『朝日』と『毎日』と『東京』が批判的に報じた。後者の中でも『東京』の論調は、「日米軍事一体化 極まる」「平和外交 姿勢見えず」「力を誇示 一辺倒」と激しい。

 米中関係は両国の国交正常化以来、いわゆる「関与政策」を米国が採用し、遅まきながらでも進展を見せていた。中国が経済的に豊かになれば政治的にも寛容な国になるとの予想は、胡錦濤時代までは現実的で好ましいと思われた。ところが習近平時代に入り、「中華民族の偉大な復興」を対外政策の目標として掲げるに至り、その強硬姿勢が顕著になった。

他方、中国の国力の上昇に対し米国の国力は相対的に低下した。その結果米国は近年、NATO諸国に対しGDPの2%を軍事に当てるとの約束の厳守を求めるに至り、日本へも軍事費の増大を求めるに至った。しかし、「日米軍事一体化 極まる」は誇大にすぎる。米国は例えば核兵器管理への他国の口出しを認めるはずもない。

 同盟関係に give and takeは避けられない。日本と同じ敗戦国のドイツとイタリアは米国の要請に応じてアフガニスタンに派兵し、ともに100人単位の死者を出した。米国は独伊両国への中露の脅威を絶対に許さないだろう。我が国民が香港住民のようになるかは国民次第だろう。

2023年1月9日月曜日

旧植民地の文化財の返還

  1月3日のNHKのBS番組で『パンドラの箱が開くとき 文化財の返還』が放映され、興味深かった。先進国がかつて略奪的にか平和的にか獲得した植民地の文化財を現地政府から返還を迫られている問題である。いたと言うべきか。 もう半世紀近く前か、植民地大国( イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなど)が母国にもたらし博物館の重要な展示品となっている旧植民地の文化財が返還要求にさらされていると読んだことがあった。これに対し先進国側は、ヨーロッパの博物館に展示されるからこそ多くの人の目ににさらされると反対しているとのことだった。

 ところが今回の番組が取り上げたのは最近のヨーロッパ諸国が繰り広げている我がちの「文化財返還オリンピック」である。取得事情は義和団の乱の際の略奪に類するものから平和的な交渉によるものまで(とはいえガラス玉との不等価交換なども)とさまざまだろうが、先進国が一斉にこれまでの態度を改めた理由はやはり植民地主義批判を避けたいため(最近のブラック・ライブズ・マター運動の影響まで!)。

しかし受け入れ側の旧植民地側は展示内容にふさわしい収容施設を造らねばならない。これまでも貸したら無くなった例もあり、「私たちはパンドラの箱を開けてしまった」との先進国側の反省まであるという。

 私自身は旧植民地への文化財の返還は正しいと思っていた。しかし米国の攻撃によるフセイン体制の崩壊に際してバグダードの博物館が犯罪者の略奪の対象となったとの報道を知ったとき、一部の文化財を先進国に残すのもアリかと思った。少なくとも受け入れ態勢の完備は必要条件なのでは。

2023年1月5日木曜日

少子化対策と移民

  岸田首相が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策への挑戦」を約束した。並みの対策では少子化を止められないことを認めたと言うことだろう。その認識に賛成を惜しまない。しかし難題ではある。それは社会の先進国化に伴うものだから。

 首相は少子化対策として児童手当を始めとする経済的支援を挙げた。考えられるのは出産費用援助の増額や保育園から大学までの学費などの支援だろう。それらは無論望ましい。しかし少子化の根本原因は先進国における女性の地位向上だろう。女性が「家」の圧力から解放され、家庭の外に出て自ら生計を立てるすべを知った以上、金銭的支援の効果は十全とは言えないだろう。

 そうとすれば、外国移民への期待は好悪を越えた必要となるだろう。無論反対はあるだろうし(過去の私)、移民送り出し国への配慮は欠かせない。最近は日本での経済移民の得る利点はかつてほどでないとも聞く。しかし、先進国に近づいている中国はともかく、東アジアでは我が国の治安の良さや国民の親切心などは未だ一定の評価を受けているのではないか。仮に将来帰国する者が多くても、日本への理解が深まることは期待できる。仮に日本滞在中はいろいろ不満を口にしても帰国すれば記憶の中で日本の美点が膨らむと私は確信する。これは小さなことではない。