1月3日のNHKのBS番組で『パンドラの箱が開くとき 文化財の返還』が放映され、興味深かった。先進国がかつて略奪的にか平和的にか獲得した植民地の文化財を現地政府から返還を迫られている問題である。いたと言うべきか。 もう半世紀近く前か、植民地大国( イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなど)が母国にもたらし博物館の重要な展示品となっている旧植民地の文化財が返還要求にさらされていると読んだことがあった。これに対し先進国側は、ヨーロッパの博物館に展示されるからこそ多くの人の目ににさらされると反対しているとのことだった。
ところが今回の番組が取り上げたのは最近のヨーロッパ諸国が繰り広げている我がちの「文化財返還オリンピック」である。取得事情は義和団の乱の際の略奪に類するものから平和的な交渉によるものまで(とはいえガラス玉との不等価交換なども)とさまざまだろうが、先進国が一斉にこれまでの態度を改めた理由はやはり植民地主義批判を避けたいため(最近のブラック・ライブズ・マター運動の影響まで!)。
しかし受け入れ側の旧植民地側は展示内容にふさわしい収容施設を造らねばならない。これまでも貸したら無くなった例もあり、「私たちはパンドラの箱を開けてしまった」との先進国側の反省まであるという。
私自身は旧植民地への文化財の返還は正しいと思っていた。しかし米国の攻撃によるフセイン体制の崩壊に際してバグダードの博物館が犯罪者の略奪の対象となったとの報道を知ったとき、一部の文化財を先進国に残すのもアリかと思った。少なくとも受け入れ態勢の完備は必要条件なのでは。
0 件のコメント:
コメントを投稿