2023年11月13日月曜日

あちら立てればこちら立たず

  徳冨蘆花の『自然と人生』の中で作者は自家の庭が「十坪に過ぎず」とたしか書いていた。語感としては狭いと言い訳しているようだが、明治時代の借家の庭としてどうなのだろうか。

 測ったことはないが、我が家の庭の面積も似たようなものだろう。広いのか狭いのか何とも言えないが、50年以上前の多摩市の規制では敷地面積に対して小さな家しか建てられなかった(のちに緩和)のでそうなった。 松竹映画『結婚します』で竹脇無我の自宅として一瞬利用されたが、映画の中では「母1人子1人の家」とされていた由!

 以前に書いたように、美観のため庭に夏蜜柑の木を植えたかったがすぐに入手できず、温州みかんに一年先を越された。おかげで最盛期にはみかんを買わずに済むほど恩恵に与ったが、去年を最後に枯れ、今年に完全除去した。すると夏蜜柑の木の存在がクローズアップされ、最初の希望が半世紀近く経って突如実現した。

 しかしこれまで蜜柑(と一口柚の木)が前の道路を歩く人の視線を遮ってきた恩恵も失われた。なにやら庭と道路が一つながりになった感じで、あわてて最近は全く使っていなかった車庫の前のサビだらけの鉄の鎖を復活して何とか格好をつけた。あちら立てればこちら立たずとはよく言ったものである。

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