今年のベネチア国際映画祭で濱口竜介監督の邦画『悪は存在しない』が銀獅子賞に選ばれた。その昔、黒澤明監督の『羅生門』が同映画祭の金獅子賞を得た時の日本人の驚きを覚えている者には、三大映画祭での日本映画の受賞がそれほど大きな話題とならない現在とは隔世の感がある。同じ黒澤明監督の『七人の侍』など、欧米の監督が敬意を込めつつ日本映画の焼き直しのような作品を作るようにもなった。
黒澤監督の作品群のようなスケールの大きな作品とは正反対のような小津康次郎監督の作品群が欧米で高く評価されるとは当時は想像もできなかったのに、今では小津康次郎の評価が欧米で滅法高いのも私などの世代には驚きである。
日本的であることが世界でマイナス評価とならない時代になったが、当時は黒澤明と並び称される人気だったものに木下恵介監督の作品群がある。日本最初のカラー映画の『カルメン故郷に帰る』や『二十四の瞳』や『喜びも悲しみも幾歳月』など当時は「国民的映画」とも呼ぶべき作品群が、こんにちそれほど顧みられていないのは大ファンだった私には不満である。それともいつか再評価される時代が来るのだろうか?
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