2023年7月11日火曜日

玉城沖縄県知事の訪中

 玉城沖縄県知事が中国を訪問し、対岸の福建省にある琉球館と琉球墓を訪れた。そもそも沖縄は近代以前は日本と中国の双方に属していた(両属)とも聞くし、福建省にそうした施設が残存しているのなら訪問するのは自然である。しかしその後、中国のナンバー2の李強首相が玉城知事と会見したと聞き驚いた。格式にこだわる中国で、首相が県知事と会うとは。

 会見の報道に接して思い出したのは半世紀以上前の作家井上靖の中国訪問に際しての中国側の厚遇である。数年前?の同氏の『天平の甍』は、遣唐使の時代に高僧を日本に招くとの使命も帯びて中国に派遣された数人の留学僧の物語である。愚直に勉学に励んだ上に鑑真の招聘にも力を尽くした僧、 自分の知的能力に絶望して仏典の筆写と日本招来を自分の使命とした僧、性格が弱く望郷の念にかられた(「日本人は日本でしか本当には生きれないのだ」)挙句、現地人と結婚して仲間たちの帰国を見送った僧らを描いて英国留学半年前の私を深く感動させた( 前進座の公演も見た)。 当時、日中友好を宣伝していた中国が『天平の甍』の人気を見逃す筈もなく井上靖は破格の厚遇を受けた。

 その後、同じく作家の松本清張が中国を訪問したが先方は特別の配慮を示さなかった。自尊心を深く傷つけられた清張は帰国後に『文藝春秋』に旅行記を載せたが、 唐代の高僧名鑑に鑑真の名は載っていないとケチをつけた。名鑑と言っても一種とは限らないし、鑑真の功績が減るわけではないが.............。

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