それに対しては旧ソ連による日ソ中立条約違反や日本降伏後の攻撃、捕虜のシベリア抑留 ( すべて国際法違反 ) は何なのだと日本人なら言いたくもなる。しかし私は旧ソ連と現在のロシアとを同一視することには賛成できない ( それでは某国と同じになってしまう )。スターリン暴政の最大の被害者は旧ソ連国民なのだから。
最近号の『文芸春秋』に、A級戦犯として処刑された7人の1人木村兵太郎大将の長男の、中島岳志氏との対談が載っている。私も含め殆どの日本人が知らない名前だが、東條内閣の陸軍次官で、ビルマ戦線末期に派遣軍総司令官を務めた。A級戦犯となった理由は後者しか考えられず、ビルマから一度は追い出された英国が復讐と見せしめの対象に選んだのだろう。
同じことはシンガポールで英軍を降伏させた山下奉文将軍とフィリピンで米比軍を降伏させた本間雅晴将軍の死刑 ( 現地法廷での判決 ) にも言える。英国の東洋支配の拠点シンガポールの陥落は当時世界に喧伝されたし、フィリピンの「バターン死の行進」は真珠湾奇襲と並んで米国民を憤激させた。しかし、教科書裁判で知られる家永三郎氏が、これが戦争犯罪と言えるのか何とも言えないとしている ( 『戦争責任』1985 年 ) ように、思いもよらない多数の捕虜を獲得して彼らを炎天下に長距離歩行 ( 42キロ。残り80キロほどは鉄道とトラック。Wikipedia ) させたのは、当時の日本の国力からすれば残虐行為とまでは言えなかったろう ( 『風と共に去りぬ』の読者はリンカーンが残虐行為で作者に避難されていることを覚えていよう。南軍の多数の捕虜に北軍が対応しきれなかったようだ ) 。緒戦でフィリピンから逃亡したマッカーサーはその原因を作った本間将軍 ( 人格者として知られる ) を見せしめのため殺さねばならなかった。
我々は戦犯裁判の判決を受諾して講和条約を結んだ以上、対外的に「蒸し返す」べきではないが、不公平な扱いを受けた戦犯の無念は忘れたくない。
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