小樽高等商業 (現小樽商大 )出身の伊藤整は戦後軽妙なエッセイ集『女性に関する十二章』(内容は男性に関する十二章なのだが )や小説『氾濫』、『日本文壇史』など硬軟両様の作家活動で人気を博した。私も一度だけ文学講演を聞いたことがあるが、今から思えば大著『日本文壇史』執筆中の「こぼれ話」だったのだろう。
同じく小樽高商出身者では『蟹工船』の作者小林多喜二が最近「新しい貧困」に苦しむ若者の間でブームを呼んだ ( メディアによると )。蟹工船に実際に乗った経験のないのに嵐の場面などよく書けたものとその才能に感心するが、創作ノートには蟹工船の実態はそれほど酷くはなかったと書いている ( 文庫版の解説 ) ことはどの程度知られているのだろうか。
戦前から小樽高商は外国人教師を招いて英語教育に力を入れていた。戦前最後の?英人教師だったリチャード・ストーリーは後年英国を代表する日本学者の一人となった。ドロシー夫人の著した『リチャード・ストーリー 日本人の心の友』(霞出版社)によると、当時冬の小樽は雪橇が往来する街だった。リチャード自身、始まったばかり?の民間航空で独り来道するのに、燃料補給のため仙台と青森に立ち寄らなければならなかった。それにしても彼が性病に罹った事実まで書くこともなかったのでは! 私は「のんきな父さん」然としたストーリーさんしか知らないが。
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