2014年10月26日日曜日

非サユリストの吉永映画評

今朝のNHKテレビで南伊豆河津川のモクズ蟹猟が紹介されていたが、最初の画面は、河津川に面し川端康成が泊まった( 『伊豆の踊り子』のエピソードを経験した際 )湯ケ野温泉福田家旅館だった。 

三十年近く前、私も福田家に一泊し日活映画で踊り子を演じた吉永小百合と同じ部屋に泊まった( 同じ日にではない!)。いつもどうり突然の発意であり泊まれる確信はなかったが、電話で予約が取れた。ところが当日案内された部屋は胸の高さに窓( 硝子戸や障子戸ではない )があるだけの部屋で、本来は女中部屋か布団部屋だったと想像された。せめて電話でその旨説明して欲しかったが、女将は「この部屋は吉永小百合が撮影期間中泊まった部屋だ」と言っただけで弁解の気配もなかった。吉永は人目がうるさくてその心配のない山側の部屋を選んだという。サユリストなら同じ部屋に泊まれて嬉しかろうが、そうでない私には不満しかなかった(宿泊料は安くなかった)。

私の世代の者にはサユリストは少なくなかったろうが、私は妙に芸術づいていた時期だったので、黒澤明や木下恵介の作品は欠かさず観たが、日活青春映画専門だった吉永の映画を全く見たことが無かった。のち、『キューポラのある街』など当時の作品を多少はテレビで見たが、今も名作として紹介される『キューポラのある街』も在日朝鮮人の帰国運動への批判的視点を欠いている点で、それほど感心しなかった。極めて稀だが当時すでに、『北帰行』の作詞作曲者で当時TBSの幹部だった宇田博のように北朝鮮の異常さに気づき警告した人はいたが。それでも彼女の美しさは抜群だった。

その吉永の最新作『ふしぎな岬の物語』を見た。これも好意的批評が目立ったし、事実気持ちの良い作品だったが、相も変わらず吉永が、「清く、正しく、美しく」の役柄を演じているのは食傷気味でもあった。一作だけ( 天国の駅 )殺人犯で死刑になる女性を演じたことはあるが、彼女はすばらしい女性しか演じさせてもらえないようだし、彼女自身その殻を破る気もないことが今回示されたようだ。

P.S. 以前、『蜩の記』がモントリオール映画祭で受賞したと書いたが、受賞したのは『不思議な岬の物語』でした。

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