2014年10月12日日曜日

非正規労働者問題の真実は?

昨日の朝日新聞にアンドルー・ゴードン・ハーバート大学教授へのインタビューが載っていた。「中流家庭は崩れてしまったのでしょうか。格差は広がるばかりですか」との記者の質問へのゴードン氏の答えは全く意外だった。

「日本で正規雇用されている労働者の数は、80年代に約3400万人ですが、この数字は今もあまり変わりません。非正規の数は其の間に約600万人から約二千万人に増えました。その原因は、より多くの高齢者や女性が非正規で働くようになったこと。自営業と家族労働に従事していた人たちが雇用者( 被雇用者の誤訳?)として働き始めたことにあります。ですから、正規を直接犠牲にして非正規が増えているわけではありません」。

わが国のメディアでは非正規労働者の増加がひんぱんに論じられ問題視( 大問題視)されてきたが、実際には正規が非正規に置きかえられてきたとは必ずしも言えないという。むろん安心などしてはいられない。しかし、長期間の激しい円高にもかかわらず正規雇用が減少したわけでは無いとは初耳で、日本のメディアでは決して聞いたことのない事実である。我が国が正規雇用の絶対数を維持してきたことはそれなりに評価すべきだろう。

よく考えれば、朝日新聞の従軍慰安婦と原発所長との二つの誤報問題とこれまでの非正規雇用問題の報道( 全メディアの)とは全く同根である。高橋源一郎氏が先日の同紙の「論壇時評」で二つの誤報問題に関連して、正義と事実のどちらかを選ばなければならないなら事実を選ぶとの誰か( 名前は失念 )の発言を紹介していたが、全く同感である。事実を等閑視した正義はもはや正義ではないからである。非正規労働者への同情からといえども事実を隠すなら矢張り誤報に限りなく近く、報道関係者がやってはならない事の筈である。

外国の学者に指摘されるまで日本の学者は事実に気づかなかったのだろうか。それとも同じ事を日本の学者が指摘しても無視され、外国の学者が指摘すれば取りあげるというわが国の悪弊がまた繰り返されたということだろうか。

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