2014年10月22日水曜日

円安は本当に国民生活にマイナスか

新聞やテレビで円安進行の影響を受ける企業の苦境がひんぱんに報道されている。当事者の苦労には同情するが、二年ほど前までは円高に苦しむ企業がひんぱんに報道されていた。どちらの報道も誤りとは言えないが、円高の時に超過利益を得た企業と円安の時に超過利益を得た企業はそれぞれ少なくないはずなのに、それらに関する報道はあまり見かけなかった。メディアが事実を忠実に伝えたとはとても言えまい。

円高円安それぞれの時期に儲かったのは大企業であり、中小企業はその恩恵に与らなかったとの報道もよく見る。しかし、昨日の朝日新聞の「経済気象台」(企業経営者とエコノミストによる匿名の小コラム)によれば、「中小企業の倒産件数は急速に減って」おり、この一年間は何と「バブル景気崩壊直前の1990年度以来の低水準だ」という。アベノミクスの最終評価は下せる段階ではないが、伝えられる人手不足現象の受益者は既に正規職に就ている者よりも非正規労働者(時間当たり賃金の上昇などを含め)であることは否めない。むしろ国民所得の平準化に寄与しているとの見方もできる。

円高や円安など通貨価値の変動で苦しむ企業や国民を報道するのが悪いのではない。しかし、それで利益を得た企業や国民のことを一切報道しないなら、それは偏った報道と言うほかない。メディアが安直な正義感で事実を取捨選択するのは傲慢そのものである。

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