2017年8月7日月曜日

先進国労組の苦悩

昨日の新聞に「全米自動車労組     日産進出に失敗」との記事が載っている。南部ミシシッピ州の日産自動車キャントン工場にも労組を結成しようとの全米自動車労組 ( UAW ) の試みが当の労働者により2244票対1307票で否決された。労働者の味方である労組を当の労働者が拒否したのである。昔なら考えられない事態である。

米国と異なり我が国の労組は企業別組合であり、賃上げにせよ労働条件の改善にせよ要求貫徹のためストライキまですることは少ない ( とりわけ近年は )。そのため過労死など多くの問題を抱えるが、理解できる面もある。山一や拓銀や最近の東芝など一流企業が突然倒産したり危機に陥るのを見せつけられれば、多少の賃上げよりも失業を免れることの方を重視するのは理解できる。終身雇用の一流企業の社員なら尚更だろう。

一方、会社別組織ではないUAWはそうした配慮をしないで済むのでストライキもやりやすい。その結果、米国の自動車産業労働者は労働貴族とまでは言えないが、他産業の労働者よりも好待遇を享受してきた。しかし経済のグローバル化により企業には自国労働者に高い賃金を払うぐらいならメキシコやカナダやアジア・アフリカに新工場を建てる方が有利となった。ミシシッピ州の日産自動車の労働者は労組が活躍すればむしろ自分たちの地位が不安定になると判断した。それが誤解とまでは言えない。

100年以上にわたり労働者階級の地位向上を担ってきた労働組合が労働者により忌避される時代が来るとは誰が予想したろうか。先進国の労働者組織の悩みは容易に解決しそうにない。最近の日本の「連合」の混迷もリーダーの不手際だけに帰することは出来ないだろう。

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