2017年8月15日火曜日

シャーロッツビル事件に見る米国民の分断

第二次大戦終了後間もなくの1949年にノーベル文学賞を受賞したウィリアム・フォークナーが1955年に来日し講演した際、われわれ南部の米国人と日本人は敗戦国民同士として理解しあえると語って私を驚かした。南北戦争から百年近く経っても彼の南部人としての自覚は失われていなかったのである。

米国南部ヴァージニア州のシャーロッツビルで白人至上主義者の集会参加者と対抗デモ参加者たちとの間に激しい暴力沙汰が生じ、死者まで出た。トランプ大統領誕生以来の米国民間の分断が生んだ人種紛争ではあるが、直接の原因は南北戦争中の南軍の司令官ロバート・E・リー将軍の銅像を州知事 ( 州議会?)が撤去を計画したことにあった。

南軍の名将リー将軍はリンカーン大統領から北軍参加を懇請されたが謝絶し、故郷ヴァージニア軍の司令官として戦功を重ねた。最後は南軍総司令官として降伏文書に調印した。「彼はその悲劇的経歴のゆえに、単に南部のみならずアメリカの国民的英雄となった」( 小学館 「大日本百科全書」)。

リー将軍は生粋の軍人で政治家ではないが、その生涯はわが国の西郷隆盛に似ている。「維新の功臣」西郷は晩年に西南戦争で朝敵となったが、のち明治天皇は彼の賊徒の汚名を解いた。リー将軍も1975年にフォード大統領により名誉回復された ( 実人生では将軍は南北戦争後大学学長を務めている )。わが国で西郷の銅像を撤去しようとする鹿児島県知事がいれば賢明な知事とはいえまい。ほぼ同時代のリー将軍が非政治的軍人として出身州のため戦ったとしても、150年後にその銅像を撤去することが賢明な行為だろうか?  かつての南部連合の国旗を掲げる白人至上主義者たちの時代錯誤ぶりは到底是認できないが、ボリティカル・コレクトネスを意識したヴァージニア州知事の行為もトランプ大統領のそれと同様に国民の分断を生んでいるのではなかろうか。

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