2017年7月13日木曜日

「ゴーストップ事件」の時代

長期間メディアを賛否で二分した「共謀罪法」が施行の日を迎えた。昨日の『朝日』にタレントのパトリック・ハーランのインタビュー記事が載っている。彼は「『共謀罪法』についての僕の主張は、みなさんの意見と違うかもしれない」とことわりながらも、「僕は『共謀罪法』が日本にあってもいいと思っています。テロ対策は大事だし、国際組織犯罪防止条約を締結し、人身売買やマネーロンダリングの摘発を強化するべきです」と賛成意見を述べている。もし『朝日』がハーランの法案賛成を知りながらインタビューをしたのなら、私は同紙を高く評価するのだが.........。

これまで国際組織犯罪防止条約に加盟していた187か国に日本が188か国目の加盟国となる。他の未加盟国は、イラン、ソロモン諸島、コンゴ共和国、ツバル、パプアニューギニア、パラオ、南スーダン、ソマリア、ブータン、フィジーの10か国。太平洋の島嶼国とブータンを除く4か国はそもそも民主主義国家ではない。

新聞各紙によると暴力団山口組が共謀罪を「法律の実績作りのためにヤクザが集中的に対象とされる」、「トップを含め、根こそぎ摘発、有罪にしようとするもの」と対策を呼びかけている。何年か前の暴力団対策法で大きな打撃を蒙った暴力団としては正常な反応なのだろう。

1933年、大阪で「ゴーストップ事件」が起こった。交通信号を無視した陸軍兵士を巡査が呼び止めたことから両者の殴り合いとなり、果ては陸軍省と内務省 ( 警察はその管轄 ) の対立となる大事件となった。結局は陸軍の主張が通ったが、なぜこの程度の偶発事件が本省を巻き込む対立となったのか。現在から見れば馬鹿馬鹿しい限りの意地の張り合いだが、当時の両者には「陛下の軍人」、「陛下の警察官」としての面子がかかっており、簡単には引き下がれなかったのである。警察官も自衛隊員も裁判官も現憲法ではみな主権者である国民の公僕、奉仕者である。しかし、戦前はそうではなかった。国制の根本的な違いを忘れてはなるまい。

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