2016年10月5日水曜日

死刑廃止論の行方

日本弁護士連合会が国連の勧告に応じて死刑制度廃止 ( 2020年迄に ) の提言を七日の「人権擁護大会」で決めるという記事が載ったと思ったら翌日、犯罪被害者の支援に取り組む弁護士たちが反対声明を出した。反対理由は基本的には「犯罪被害者の人権や尊厳に配慮がない」ということだが、手続き論としても強制加入制の日弁連が会員の思想・良心の自由を損なう決定をすべきでないこと、大会出席者は会員の数%に過ぎずそうした決定をする権限はないということである。

私は「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」の主張に全面的に賛成である。手続き論としてもそうだが、それを離れても死刑制度を止むを得ないと考えるから。高名な廃止論者に元警察官僚にして元自民党幹部の亀井静香氏がいるが、氏の著書 ( ブックレット ) にも冤罪の可能性など聞き慣れた反対理由しか挙げられていない。

廃止論者が真っ先に挙げる冤罪の可能性が絶無とは言わないが、戦後しばらくはともかく現在のわが国では、死刑囚がしばしば再審を認められている事実が示すように、犯行をあくまで否定する死刑囚が刑を実行されることは先ず考えられない。国連加盟国の中には政治的反対者を死刑にする国が少なくない ( 国連の人権擁護組織のメンバーにはそうした国の国民が少なくないようだ ) が、わが国ではそうしたことはあり得ない。死刑の犯罪抑止効果はあまり期待できないとしても、逆に国によっては犯罪者と見なされた者を裁判の手間を省くため射殺する誘惑は強まる。

しかし私が死刑を是認するのはそれが正義に叶うと思うからである。前にも紹介した気もするが、オバマ大統領はビンラディンの殺害に成功した際 、Justice has been done! と叫んだ。一人でも他人の生命を奪った者は原則として自分の生命で罪を贖うべきだが同情すべきケースもあろう。複数の生命を奪うと死刑判決という現在のわが国の慣行は妥当なのだろう。EU諸国の犯罪者の人権擁護のための死刑廃止論に私は偽善の匂いを感じてならない。

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