ルコルビュジエを紹介する新聞各紙は、スイス出身とことわりながらも「フランスのルコルビュジエ」と記している。じじつ途中でフランスに国籍を変更したという。ルソーの昔からフランス系スイス人とフランス人との国籍の違いは問題にされないようだ。
スイスはドイツ系、フランス系、イタリア系の民族が使用言語はまったく違っても一つの国民として共存する。それでも第一次世界大戦時には流石に各民族間の緊張は極度に高まったが、国民としての一体性はかろうじて保たれ、その後定着した。だが、それは稀な例のようだ。いま世界ではいたるところで一国内の多数派民族と少数派民族の争いがある。ヨーロッパでも何十年と続いたチェコスロバキアは二つに分かれて今は存在しない。ベルギーではフランス系とオランダ系の対立が続いている。
30年ほど前、ブリュッセルの日本料理店で日本に関心を寄せるベルギーの青年と偶然テーブルを共にした ( うがった見方だが、外国人にとってその国の日本料理店は日本人とのコネを作る一つの方法でもあるのでは?)。いろいろ話題をかわした中で私が、「君はワロン (フランス系 )かフラマン ( オランダ系 ) か」と聞いたら「私はベルギー人だ」と強い調子で返され、赤面したことがある。しかし、ベルギーがチェコスロバキアのように将来分裂する可能性は絶無とは言えないようだ。EUの存在、ともにEUの一員であるということで分裂を防いでいると読んだ記憶がある。
西ヨーロッパから他地域に目を移せば、至るところで多数派民族と少数派民族との流血の争いが続いている。今度のトルコのクーデターは民族対立とは無関係のようだが、同国は第一次世界大戦中のアルメニア人虐殺や現在のクルド人との衝突と民族問題の解決に難渋している。トルコに限らず多数派により大きな譲歩を期待したい。フィンランドはスウェーデン人を少数民族 ( 約1割 ) として抱えているが、道路の地名は両国語で表示されていると聞く。
トルコが抜きんでた親日国と聞くだけに問題を理性的に解決して欲しい。私は我が国の死刑制度に反対ではないが、伝えられるようにクーデターを機にトルコが死刑復活を考慮するようでは念願のEU加盟は遠のくばかりである。もっとも英国離脱でEUの魅力はこれまでとは違ってきたが.......。
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