福島の( 信夫 ) 高湯、山形の蔵王高湯と白布高湯は奥羽三高湯と呼ばれる高地温泉であるが、その中で私は福島の高湯を一番に好む。蔵王は冬のスノーモンスターは素晴らしいが温泉地としてはやや広がり過ぎ趣に欠ける ( 2軒くらいで断定して申し訳ない!)。白布高湯は米沢藩主の贔屓の名湯で巨きな藁屋根の宿が3軒並んで立つ様は壮観だったが、唯一泊まったことの無い東館が火災にあったと聞く。
信夫高湯は磐梯吾妻スカイライン沿いの高地の山の湯で、何よりも10軒足らずの宿のある現地に入ると硫化水素の匂いに包まれるのが素晴らしい。これ迄ハイランドホテルに二回、日本秘湯の会のA館に三回、今回のT館に始めて泊まったが、唯一露天風呂のないホテルでも失望はしなかった。
4月下旬ないし中旬 ( 年による ) の東北道は芽吹きの山中と高速道脇の双方の山桜がたっぷり見られるのが楽しみで、今回は都合でたった一泊のために福島に往復した。途中、いつものことだが雪の残る安達太良山が我々を見下ろしている。半世紀以上前、友人2人と登ったことがある。旧火山らしい荒々しい山頂を超え会津側にくだった二人はそれぞれ20年前と10年前にこの世を去った。その時はそれを知るべくも無かったが、安達太良山の下を過ぎるたび毎に運命の不思議を思わずにはいられない。