国民党候補が大差で敗れたのはメディアも指摘しているように住民の間の台湾人意識の成長が大きかったのだろう。私は馬英九現総統が失政というほどのことをしたとは思わない。中国本土との経済関係の強化は台湾経済にとってマイナスではなかったと思う。馬政権下で貧富の格差が拡大したとされるが、同じことはわが国についても言われており、馬氏の失政というよりも自由主義経済自体の問題だろう。
ただ、外省人出身の馬氏は台湾人意識の成長に対しもっと敏感であるべきだったとは言えそうだ。すでに民主的政権交替を実現していた台湾住民が少なくとも現在の中国への復帰はおろか接近さえ望まないとしても当然である。選挙前に香港の言論人や出版人数人が中国で抑留されたとの報道は台湾人の警戒心を高めたろう。香港の若者の「雨傘革命」は中国の圧力でしりすぼみになったが、台湾住民に「一国二制度」の実態を示した点で大きな功績があったと私は考えている。
今後、台湾には慎重さが望まれるが、蔡政権も本土との経済関係を悪化させるつもりは毛頭無いだろう。習政権は選挙結果を尊重し、台湾住民が「一国二制度」を信用できるよう努力する他ない。日本は台湾の平和的政権交替を高く評価しても民進党の勝利としてあからさまに歓迎するのは良くない。国民党候補を支持したものも住民の三分の一を占めたのである。
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