2015年9月20日日曜日

浅田次郎氏に失望

作家で日本ペンクラブ会長の浅田次郎氏が、「民主主義を、おざなりな多数決に堕落させ、戦後の日本社会が培ってきた平和主義、世界中の人々の信頼を壊した」とのクラブ声明を出したという。がっかりである。

民主制の下での多数決への批判は珍しくない。しかし公民教科書的な民主主義理解はときに人を誤らせる。人間は誰でも自分の意見が正しいと思っている。しかし他人もそう思っている以上、そして剣による解決が許されない以上、便宜的でも多数決による解決によるしかない。

むろん何事にも例外はある。ナチスは選挙により、つまり多数決により政権に着き暴政を行なった。しかし彼らは議会制民主主義を手段として利用しただけで、その尊重を約束してはいなかった。戦後の西独の基本法 ( 憲法 ) が全体主義政党を禁止したのはそのためである。浅田氏も自民党が全体主義政党だとはまさか主張しないと信ずる。

「英国の議会は男を女に、女を男にする以外は何でもできる」と言われる。むろん諺の類いには常に誇張があるし、英国は成文憲法を持たないという事情はあるが、議員は選挙民の代表ではあるが代理ではない。特別に国民投票を行う場合以外は不確かな「世論」などにわずらはされず自からの識見を優先すべきなのは当然である。

報道で知る限り浅田声明とは逆に、中国と韓国は除きアジア諸国の反応は好意的である。ベトナムやフィリピンは当然だが台湾、インドネシア、オーストラリアなど日本の安全保障政策の強化を歓迎しているし、他の諸国も中国の反応を気にしつつも批判していない。アジアのどの国も中国の一強支配を歓迎するはずがない。この問題で他国の評価が目に入らないのは片手落ちではなかろうか。私には「世界中の人々の信頼を壊した」とはとても思えない。

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