9日のロシアの対ドイツ戦勝70周年記念式典について私の購読している新聞をはじめメディアは、西側諸国首脳の出席ボイコットや新兵器を誇示した軍事パレードについて詳しく報じている。それらの問題の重要性は疑い得ないが、他紙の記事でモスクワのパレード参加者数が50万人、ロシア全土では2000万人だったと知った。むろん政府による参加働きかけはあっただろうし、そもそもロシアは人口大国だが、もはや参加を強制できる全体主義国家ではない。西側諸国との対立激化で物価は五割も跳ね上がっているというのに。この数字は「軍事力を誇示」といった見出しで済ませて良いとは思わない。ウクライナ問題はロシア人のナショナリズムを激発させてしまったのである。
これ迄もブログに書いてきたが、西側諸国の理解がどうあれロシアから見れば、この20余年は屈辱の20余年だった。いかに弱体化したとはいえ依然原爆大国であるロシアの国益の軽視は、仮に西側にその意図が無かったとしても賢明ではなかった。5月5日まで『朝日』に11回にわたり連載された「プーチンの実像」(予定された単行本化が待たれる )は、これまで流布されたプーチン像とは大きく異なっている (同紙の10日の社説の主張とも 異なる)。彼は早くからソ連共産主義に見切りをつけ、ソ連崩壊後は任地サンクトペテルブルクに外資を率先して導入し、柔道への深い敬意で関係者を感激させたなど、当初から反西欧ではなかった。今回の式典での演説も米国の「一極支配」に反対する意図は誤りではない。どの他国による一極支配よりも米国の一極支配が望ましいとしても、一極支配よりも、米中二極支配よりも,多極支配が世界にとっても日本にとっても望ましい。
「プーチンの実像」はプーチンがもはや西側に絶望して政策変更した可能性も示唆しているが、中国と世界最長の国境線をを持つロシアが、地政学 (嫌な言葉だが )からして中国への警戒心を失うとは思えない。これ以上ロシアを中国の側に押しやって良いはずがない。
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