2018年1月6日土曜日

西郷隆盛ブームへの危惧

テレビ局が間も無く開始するドラマの宣伝のため出演者を他のバラエティ番組などに出演させるのは見慣れた光景である。しかし最近のNHK、とくに間も無く始まる西郷隆盛の前宣伝番組の多さは目に余る。公共放送がそこまで番組視聴率にこだわるのかと言いたくなる。

私は同局の日曜時代劇はこれ迄かなり見ている方だが、今回の西郷宣伝番組群はほとんど見ていなかった。しかし偶々1月3日夜の『英雄たちの選択 SP..........これが薩摩藩の底力』は、私自身かなりの磯田道史ファンでもあり、旅先ですることもなく途中からだが見ることになった。番組は西郷や大久保利通を生んだ薩摩藩の少年教育制度などがテーマであり、両名の歴史的評価を正面から論じたものではなかったが、全体として肯定的だったとは言える。

これまでのこのブログの読者は、私が西郷や大久保が公武合体論を排する「王政復古クーデター」で戊辰戦争を惹き起こしたことに批判的であることを御承知だろう。今回の『英雄たちの選択』は全体として討幕の是非を論じていなかったが、西郷らが当時の開明派で彼らにも影響を与えた信州上田藩の学者 ( たしか ) を自分たちの討幕計画を知られたため暗殺した ( それも薩摩藩邸での会合の帰りに ) とのエピソードにはやはりそうかとの思いを禁じえなかった。

坂本竜馬の暗殺に薩摩が絡んでいた ( 実行者は見廻組でも ) との説は新しくはなく ( 私自身は確か三好徹『龍馬暗殺異聞』1969年原作のテレビドラマで最初に知った ) 、専門家にはおおむね否定されているようだろ。しかしこれ迄の同志的関係はともあれ、公武合体論に転向した竜馬が西郷や大久保にとって邪魔者となっていたことは否定できない。

NHKの日曜時代劇は歴史の装いをした娯楽作品であり、目くじらを立てる対象ではないかもしれない。しかし、今の持ち上げぶりを見ていると新番組が単なる西郷賛美に終わるのではとの懸念を禁じ得ない。

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