以前のフランスのテロ事件でも今回の英国のケースでも、犯人はすでに警備当局に危険人物と目されていた。それでも事件を防止出来なかったのは人権尊重の原則が当局の手を縛ったと見られる。その後のフランスは非常事態宣言の相次ぐ延長という形で令状なしの家宅捜査を可能にした。英国も同じ立場に追い込まれるかもしれない。異教徒に対する「聖戦」は天国へのパスポートとなれば自殺覚悟のテロを阻止することは難しい。
さらに深刻と私に思えるのは、トルコやインドネシアのように従来は政教分離を国是としていたり、穏健派のイスラム国とされた国々で逆流が生じていることである。トルコでもエジプトでも自由な選挙の結果イスラム回帰が生じた。その結果、マイノリティの宗教や宗派は権利を制限されたり、最悪の場合虐殺の対象となりつつある。ナセル、サダト、ムバラクと続いたエジプトの「軍人独裁」は少なくとも脱宗教を目指しており、宗教的マイノリティにとってはありがたい政権だったとさえ言える。
過日テレビ番組で、シリアで環境問題を教えているという邦人の元海外協力隊員の妻は、「何であんなに平和だった国が..........」と嘆いていた。また、「シリアの万人が納得できる結末ではないだろうが.........政権なんてもう誰がとっても構わない」との街の声が紹介されていた。
内戦を避けて国外に脱出するシリア人は多い。しかし他方で、国連の第三国移住措置で米国に移住する権利を得たのに「シリアに帰りたい」と周辺国に残ったシリア人も紹介されていた。その願いが一日でも早く実現するよう願う。
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