ホメイニ革命以来のイランはパーレビ朝の脱イスラムの近代化政策を覆してイスラム教回帰の政策を追求した。しかし、隣国イラクとの間に第二次世界大戦以来最長と言われる戦争を惹起し、多数のイラン青年を死なせた。戦争を始めたのはフセイン大統領だが、ホメイニ師は少なくとも再三の休戦の機会をつかもうとはしなかった。
現在でもイランの最高指導者は大統領ではなく保守強硬派寄りの宗教指導者ハメネイ師であり、ロハニ大統領の西欧との和解政策の前途は多難だが、イラン国民の意志が疑問の余地なく示された以上、ハメネイ師も慎重にならざるを得ないだろう。
残る問題はトランプ米大統領である。イスラム国 ( IS )打倒のためロシアとの良好な関係を重視するトランプも、ISと戦う有力勢力であるシーア派のイランとの核協定の破棄を選挙中公約した。公約を尊重しないトランプとはいえ、スンニ派大国サウジアラビアとの関係を重視すれば反イラン色を強める可能性はある。しかし、イラン内の強硬派の復活を防ぐためには穏健派政権に協力することがぜひとも必要である。イスラム諸国内で強硬派が力を得れば、キリスト教諸国とイスラム諸国との文字どうり「文明の衝突」に発展するだろう。
自国と対立する国家や国民を画一的に敵か味方かと見がちになるのはイデオロギー立国アメリカの欠点である。米国も我が国も西欧との協力政策を選択したイラン国民を失望させてはならない。
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