2016年5月19日木曜日

強者と弱者

最近ひとにすすめられ五木寛之の『余命  これからの時間をいかに豊かに生きるか』( 祥伝社 2015)を読んだ。はるか昔、友人に大変面白いと薦められた映画を見たら、いつ面白くなるのかと思ううちに終わった ( 『ボタンとリボン』)。今回も、老人は高望みせず無暗に延命を願うなとの趣旨のようで、私も日頃考えていたことなので感銘を受けたとまではいかなかったが、「老いても元気な老年」など例外に過ぎず、老人になれば体力も知力も衰えると知れとの提言はわが身に照らしても十分納得できた。

都知事の高額旅費問題に関連してか、それ以前からかは知らないが、林文子横浜市長が海外出張に際し「仕事の厳しさと七十歳という年齢を理由に」ファーストクラスの航空便を使ったとして批判された。それに対し東京新聞の「本音のコラム」( 5月16日) で常連筆者の宮子あずさ氏 ( 看護師 ) が、「誰しも加齢とともに回復力が落ちる」「高齢者にも大きな仕事を任せるならば、今回のように、快適な移動や宿泊などさまざまな形でコストがかかる可能性がある」と林市長への理解を訴えている。宮古氏は評論家の吉武輝子氏の娘で40冊以上の著書のある看護師・随筆家の由。舛添氏への言及はないし、まして公私混同に寛大ではないだろう。ただ看護の専門家として黙ってはいられなかったのだろう。

京子氏は3月7日の同コラムにも看護師として「患者の暴力や暴言に直面してきた」として、「弱者とみなされる人が牙をむくと、こちらの反論は全て権威的とみなされる。そこだけみればどちらが強者かわからない」と記している。メディアはとかく単純に病院や病院勤務者を強者に分類し、患者やその家族を被害者と報道しがちでなかったろうか。どちらが強者でどちらが弱者かはケースバイケースのはずである。メディアは自分が真に弱者の味方なのかを常に再考しなければなるまい。

PS. 昨日東京で行われた女子バレーの試合でタイの監督が審判が公正でないと憤激しているという ( 『朝日』5月20日 ) 。私は見ていないので審判が正しかったかどうかは分からない。しかし、『朝日』以外の他紙がタイ側の不満に全く言及しないのは問題ではなかろうか。私も日本女子バレーチームにぜひオリンピックに出て欲しいし昨日の勝利を喜びたいが、これでは単純に喜んでいいものか。

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