2016年5月3日火曜日

元ハンセン病患者の日常

今年のゴールデンウィークは前半が好天と聞いたので、急きょ東京に一番近い静岡県某市にやって来た。翌朝、NHKの「小さな旅」の「東京調布市  湧き水の恵み豊かに」を見ようとしたら、同地ではNHK名古屋と静岡の両局の共同制作の「ハンセン病元患者のいま (  国立駿河療養所 )」の放映だった。

富士山が大きく迫る療養所に住む大岩さんは変形した右手が使えず左手で食事を作るが、他人と会う時はどうしても右手を隠すという。週一回スクーターに乗りスーパーマーケットに出かける姿は写ったが買い物の場面は写されなかった ( スーパーとしては元患者が出入りする店とは知られたくなかったのだろう )。

明治40年から続いた隔離政策のため設置された駿河療養所はもっとも患者が多かった昭和31年には471人が収容されていた。今年、入所後58回目の春を迎えた大岩さんには其の間家族の訪問は一度もなかった。入居後、職員に「名前を変えますか」と聞かれたが大岩さんは拒んだ。

平成6年、隔離政策は廃止されたが、療養所を去った人は僅かで、9割以上が残留した。入所後「希望が無かった」大岩さんの今の生き甲斐は野菜作りで、片手で何とか耕運機を運転する。「国から面倒を見てもらっているという弱みを感ずる」ので、出来た野菜を仲間に分けることで「仕事を
して生活できて幸せ」と感ずる。

入所者の平均年齢は83歳にもなった。大岩さんの希望はハンセン病の歴史が忘れられないようにして欲しいということである。所内の納骨堂には ( 引き取り人のない?) 骨壷がずらりと並んでいる。大岩さんの遺骨もここに並ぶことだろう。

この番組はいつか中部地方以外でも放映されるだろうか?  ハンセン病患者の苦難 ( 現在も終わっているようには見えなかった )を報道することは大変有意義だと思うのだが..........。歴史 ( 過去 )を知れば現在をよりよく理解できるとはよく言われるが、逆に現在を知れば過去が見えてくるというのも真実ではなかろうか。

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