2014年3月24日月曜日

物づくりの心

トヨタ自動車の創立者豊田喜一郎と彼を支えた人たちをモデルにしたテレビドラマが放映されだ。既に知られた事実が少なくないし、一定の誇張や美化はドラマに避けられないが、我が国に自動車産業を根付かせる彼らの努力は顕彰されて然るべきだろう。

初代トヨペット・クラウンが誕生したのは私が大学生の頃で、その時の驚きは忘れられない。我が国でも独力でこんなに立派な本格的乗用車が誕生したのかと感激した。じじつ今から振り返れば、この瞬間、日本の自動車産業に希望の火が灯ったと言っても過言ではない。 
私だけが、或いは日本人だけがクラウンの美しさを感じたのでは無い。ロンドンの波止場で、初めて日本車が陸揚げされると聞いてドック労働者たちが集まってきたが、実物を見た途端彼等からホーっと感嘆の声が漏れたと言う(土崎一・辻豊「ロンドン東京5万キローー国産ドライブ記 二人は朝日新聞記者) 。もっとも価格を聞いて、それでは競争相手にならないと彼らはどっと笑って二人の記者を悔しがらせたという。それから半世紀余り、自動車産業は喜一郎が願ったように我が国経済の屋台骨になった。

ある有名自動車評論家が、「トヨタにとって自動車製造は家業である」と書いた。赤字なら転業しても良いといった程度の心で作っているのでは無いと言いたかったのであろう。一見時代遅れの様な豊田家の社長継承も此処では必ずしもマイナスではない。トヨタの社訓は自動車製造をとうして国に貢献すると謳っているが、それは現在でも忘れられてはいないようだ。

それはそれとして、最近のトヨタ車には嘗てのトヨタ2000GTやトヨタスポーツ800のような思わず心を奪われる様なデザインの車が見当たらない。トヨタに限って最大公約数的な無難な車づくりを目指す大企業病にならないと信じたいが。

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