2020年6月22日月曜日

フォークランド戦争の捉え方

「妻にして母にして一国を負ふ者が  撃て撃て撃てと叫びて止まず」「画面より『鉄の女』の声ひびき  東のわれの今日のおののき」。今日の東京新聞の『昭和遠近』という連載コラムに三国玲子歌集『鏡壁』の短歌を歌人の島田修三氏が紹介している。「鉄の女」で分かるように、サッチャー英首相のフォークランド戦争 ( 1982年 ) に際しての行動を批判した三田氏の短歌である。

フォークランド戦争は、アルゼンチン沖数百キロの英領フォークランド諸島 ( アルゼンチンではマルビナス諸島 ) を当時のアルゼンチンの軍事独裁政権が自らの不人気を挽回するため占領した紛争で、記憶しておられる人も多いだろう。米国を含む列国の仲裁の試みを退け一度は全島を占領したアルゼンチン軍に対し、サッチャー首相は二百数十名の戦死者を出しながらも軍事力で数千キロ先の島を奪回した。アルゼンチン側は女性と見て英首相を見くびった面もあろうが、それ以上に、反植民地主義の旗を掲げれば英国は反対できないとタカをくくったのだろう ( 島民は英国人の意識 ) 。サッチャーは勝利し、ガルチエリ首相はは敗北した。

英国艦隊がポーツマス港に帰還したとき出迎えた民衆の熱狂をニュースで見て、平生は冷静な ( 冷静を装う?)英国民とは思えなかった。思えば1956年の第二次中東戦争 ( ナセル政権によるスエズ運河会社接収を怒り英仏イスラエル三国軍がスエズ地区を占領した ) で米国にまで反対されて撤兵して以来、かつて「太陽の沈む事なき」英国は反植民地主義を掲げる現地勢力につねに譲歩を強いられて来た。その無念を晴らす機会をついに英国民が捉えた故の熱狂と私は理解した。

その後、フォークランド戦争を回顧した「勝利の代償」という題の英国の民間放送 ( グラナダテレビ?)の番組をNHKで見た。事実を冷静に辿っており、アルゼンチンに好意的とは言えなかったが、同国の兵士たちには同情的だった。最後に息子を戦死させた英国の母親の深い悲しみが語られていた。私はこの番組の偏らない姿勢に感じ入って授業で録画を紹介した。


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