2020年1月27日月曜日

ダンケルクは奇跡か悲劇か

今朝の産経新聞に英国のBBC製作の『ダンケルク』の大きな広告が載っている。第二次大戦初期にドイツ軍によりベルギー海岸の町ダンケルクに追い詰められた40万の英軍 ( 一部仏軍 ) が10日間に脱出帰国したエピソードは英国では「ダンケルクの奇跡 」として有名である。DVD3枚という分量は製作陣の並々ならぬ意気込みを感じさせる。漁船や個人のヨットに至るまであらゆる船舶を動員して弾雨の中で遂行された救出作戦は英国民にとって大成功だった。

じつは同名の、こちらは映画の『ダンケルク』( 1964年 ) はジャン・ポール・ベルモントの主演で1964年に公開されたフランス映画である。惨めな敗戦の上に脱出もかなわず海岸に取り残されたフランス軍兵士を描いたこの作品の印象はむろん暗かった。私は戦後のフランスが原爆開発を強行した理由は国連の五大常任理事国の面子と共に、いざとなれば同盟国も自国の都合を優先することをダンケルクで思い知らされたことも理由の一つと思う。

ヴェルサイユ条約などで軍備を厳しく制限されていたドイツはナチスのもと英仏を上回る軍事力を短期間に建設した。英仏の政治家は前大戦で自身戦傷者となったヒトラーが戦争を始めるとはどうしても信じられなかった。ナチスドイツの危険を説いたチャーチルは好戦的とみなされた。その結果戦争準備は遅れフランスは降伏し、英国は米国の援助で辛うじて踏みとどまった。父が当時の駐英大使だったジョン・ F・ケネディーのハーバード大学での卒業論文は「英国はなぜ眠ったか Why England Slept 」だった ( 同名の邦訳あり ) 。

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