1966年、ドゴール仏大統領は英国のEEC加盟申請を素気無く拒否した。ドゴールの眼には対米関係を引きずる英国は完全なヨーロッパの一員では無いと映ったのだろう。テレビのマイクを向けられたフランスの若者は「Oh mon president ! Oh mon president !(おお、我が大統領!)」とドゴールの頑固さにお手上げの様子で笑いを誘った。しかし、2020年の時点で振り返るとドゴールの拒否にも一理はあったのだろう。
そもそも戦争の再発を防止するため、また米国の経済力に対抗するため進めてきた欧州統合だとすれば、ヨーロッパの大国間の戦争など考えられない現在、統合に揺り戻しがあっても不思議では無い。しかし、英国のEU脱退決定の日、ヨーロッパ議会では議員たちが自然発生的に「蛍の光」を歌っていた。私にはそれはヨーロッパの文化的一体性を示すように思われ感動を禁じえなかった。今後どれほど経済的に対立しても、「蛍の光」とベートーベンの「歓喜の歌」はヨーロッパ人の共通の歌として歌われるだろう。