私はこれまで同氏の『国家の品格』も他の単行本も読んでいない。むしろ仄聞した氏の英語早期教育反対論に反感を抱いていた( 黒板に数式を書けば済む数学者が何を言うか!)。しかし、本書を読んで氏の行論に共感する点が少なく無かった。
教養といえば19世紀以来ドイツ文化は世界の最先端を行くものだった。しかしそのドイツ人がジェノサイドを実践した。その理由はむろん簡単では無かろうが、氏によればドイツでその高踏的?文化を享受したのは主に「教養市民層」と呼ばれる人たちだった上に、政治や経済や歴史などの「社会教養」や「科学教養」を欠いた。
ホロコーストもドイツ人がナチスの唱える優生学 ( 疑似科学 )を信じ、数値化できない「情緒」や人間性の重要性を忘却した結果起こった。「教養が無いと、一つの論理だけ猪突猛進」すると氏はいう。経験主義的でユーモアを忘れない英国人の国民性を氏はより高く評価する ( 私も同感 )。
「現代社会の病の本質は.........民主主義に教養がついていけない」点にあると考える氏は、わが国の大衆文化 的教養を( 童謡や唱歌や歌謡曲、映画、マンガなど ) を情緒を養うとして高く評価する。氏の論述には矛盾も皆無とは言えず、異論は多々あろう。しかし、「民主主義という暴走トラックを制御するものは国民の教養だけなのです」との氏の結論に同意する人は少なくあるまい。
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