はやぶさ2による小惑星探索が我が国のメディアで快挙として大きく報道されたことは記憶に新しい。しかし松井教授は「惑星探査は今の世の中で必要なのだろうか」と問いかける。「世界で5秒に1人が餓死し........、国の借金は1千兆円を超えている」。はやぶさ2は「『真理の探究』という美辞に包まれたエンターテインメントに過ぎないのではなかろうか」「惑星探査に正義があるとは思えない」と手厳しい。
こうした意見が正面きって表明されることは滅多にないが ( むしろ空前絶後?)、じつは国民の一部に分け持たれている意見かもしれない。しかし、ことは宇宙探索だけでなく純粋科学全般にかかわる深刻な問いかけである。大学理学部で追及される自然科学は結果として人類に貢献するかもしれないが、本来はこの世界の理解が目的だろう。ニュートリノ研究でノーベル賞を受賞した梶田隆章教授が研究目的を問われて「知の地平を拡大するため」と語ったのは、多年浴びた質問への考え抜かれた回答なのだろう。
他方、やはりノーベル賞を受賞した山中伸弥教授は、iPS細胞研究から画期的な創薬が為されないならば私の研究は何の意味もないと言い切っていた。同じ科学者でも山中教授が医学部出身であることと無関係ではないだろう。
じつは理学部の研究活動と同様、文学部の研究活動も実用に資することを目的としていない。あるいは前者以上に後者は「虚業」だろう。しかし理学と同様文学も効用が無いわけではない。何より基礎科学に手を抜いたとしても世界で5秒に1秒餓死者が出る現実に何の効果もない。基礎科学者からの松井教授への反発や批判は避けられないだろう。
それでも素人にも理解が容易な研究活動が過度にメディアに持て囃される事実は否めない。敢えて「暴論」?を語った松井教授に敬意を表明したい。
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