2018年10月8日月曜日

世界的文化財の保存

数日前、ブラジルの国立博物館の所蔵文化財の多くが火災により失われたと報道された。中南米諸国はそれぞれ立派な国立博物館を有するだろうが、ブラジルのそれは恐らく最も重要な博物館だったのではないか。石造やコンクリート造りでもそんなに燃えるものなのか。それにしても多大な文化的損失だろう。

火災への備えが不十分だったとしても意図的な行為による損失とは異なる。イラクのフセイン政権が崩壊したさいバクダッドの博物館が略奪に遭ったと知らされたときはショックだった。当時の私は残忍な独裁政権の崩壊を心から喜んでいたのだが。

それでも盗みは石川五右衛門の言ではないがどの国にもあったし今後もありうる。しかし、イスラム国 ( IS )によるシリアやイラクの文化遺産んの破壊には弁解の言葉も見当たらない。イスラム教以前の文化遺産は破壊して構わないということなら文化破壊の思想というほかない。

現在、大英博物館が所蔵し展示するパルテノン神殿の破風 ( エルギン・マーブル ) をはじめ欧米諸国の博物館の所蔵文化財の多くは、略奪品ではないとしてもいわば不等価交換の結果であり、いっとき返還要求がなされ話題となった。それに対し欧米諸国はロンドンやパリやニューヨークだから世界の人たちが容易に目にすることができると正当化した。一応の理屈だが ( 私もその恩恵に浴した一人 ) 、本心は返還するのが惜しかったのだろう。しかし彼らも欧米が所蔵する方が安全だとまでは言わなかった ( 仮に内心そう思っていても公然の反対理由には出来なかったろうが )。

火災のような過失による損失はどの国にもありうることだし、対策も不可能ではないが、異文化の意図的破壊による損失は対策の立てようがない。便宜的には現在の状況もやむを得ないのではないか。

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