2018年7月15日日曜日

「朝日ぎらい」の理由?

橘玲氏の『朝日ぎらい    よりよい世界のためのリベラル進化論』( 朝日新書  2018 ) を読んだ。タイトルを見れば誰でも嫌韓本、嫌中本の類いと思うだろう。しかし、サブタイトルを見ればわかるように、朝日新聞に代表される日本型リベラルをどう正道に戻すかのレシピーを論じた本である。とはいえ日本型リベラルの是正を目指すにはその病状を指摘することなしには不可能で、本書を「嫌朝日本」と見る向きも当然あろう。本書の数多くの指摘をここで紹介することなど不可能だが、その根源は何か?

「安倍一強の状況の続くなか、政権批判はおうおうにして『國民 ( 有権者 ) はだまされている』というものになる。だまされるのはバカだからで、そのことを指摘するのは自分たちエリートの責務だーー。いうまでもなくこの度し難い傲慢さが、リベラルが嫌われる ( 正当な ) 理由になっている」との引用が示すように、リベラルにつきまとうエリート意識が問題だと著者は見るが私も同感である。その典型は昨年の総選挙での安倍自民党の大勝を評した山口二郎法政大教授の「國民をたぶらかして勝利をおさめ」たとの発言だろう ( 『東京新聞』の「本音のコラム」10月29日 ) 。これでは氏の専門である政治分析として合格点はつけられない。

最大の問題は朝日新聞に代表される日本型リベラルが自らが高齢者の既得権や業界 ( 例えば都市の獣医 !) の既得権の擁護者と化していることを自覚せず、現実には保守と化していることだろう。そして若年の有権者からその主張の根拠を疑われていることだろう。

とは言え本書が、「誰も言わなかったリベラルの真実」との帯をまとい、他ならぬ朝日新書の一冊として世に出たことは一定の評価をすべきなのだろう。誰よりも先ず朝日新聞の記者たちに読んでほしい本である。

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