2018年5月15日火曜日

米国のイラン政策の転換

これまでイランに対し一定程度融和的だった米国とEU諸国の対応が、トランプ米大統領の対イラン強硬策への転換を機に割れている。トランプ氏の核合意破棄の動機は何なのか。

もっとも単純な動機はオバマ前大統領の諸政策の否定だろう。じっさいオバマケア ( 医療保険 ) への反対を手始めにトランプの反オバマの姿勢には執念のような印象さえ受ける。しかし、無論それだけが理由ではあるまい。より重要なのはイスラエル( と米国の有権者 )への配慮だろう。現行のイランとの核制限合意が期限付きでその後は未定であることとミサイル開発禁止が無いことが親イスラエルのトランプの気に入らないのだろう。さらに、彼を核合意破棄に踏み切らせた理由として、イランと激しく対立するサウジアラビアが反イスラエル色を弱めたことが従来の米国の中東での仲裁者的立場の完全放棄をもたらしたのだろう。

中東問題の専門家の高橋和夫元放送大学教授はテレビ・インタビューで別の見方を述べていた。トランプの今回の核合意破棄は、イラン程度の不徹底な合意を受け入れないぞとの北朝鮮への警告だという。たしかに、北朝鮮に対して核兵器とミサイルの完全放棄を要求しながらイランにはそれを求めないのは一貫していないとも言える。ただし高橋氏も北朝鮮への警告として効果的かは疑問だとしていたが。

それでも英仏独らヨーロッパ諸国がこれまでの核合意を守るため努力しているのはイランの穏健派政権を追い詰めたくないとの考慮だろう。私も困難でもその努力をぜひ続けて欲しいと願う。戦前日本の国際協調派を絶望させたハル・ノート ( 中国本土からの即時全面撤兵を迫った米国務長官の対日通告 ) の再現は見たくない。昭和前期のわが国の国際協調派と同様、イランの現在の政権も弱体で当てにならないと見限ったのだろうが、もう一歩の努力を惜しんではならない。

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