高齢の犯罪者にはわざと無銭飲食をするなどして刑務所入りする者が少なくないという。「木枯らしが吹くと舞い戻ってくる人々がいる。『検事さん、私も年でね。できたら南の方の刑務所をおねがいしますよ』............。雇ってくれる人もない。生活保護を求める手段も知らない。こうした人々にとって、刑務所は、飢えと寒さと世間の風から守ってくれる最後の拠り所だった」。『日本経済新聞』の火曜日の夕刊のコラムに半年間 ( 2015年1月~6月 )、25回のエッセーを寄せた元検事総長は私の短い高校教師時代の教え子である。読んだと声をかけてくれる知人は多くても、本気で書いた宗教や社会時評への言及ではなく「人情話」への評が多かったということだが、同君の謙遜と照れ隠しだろう。生徒の頃の抜群のスピーチの才能が今は文筆の才に姿を変えている。見聞したことのない ( むろん正式入所したこともない!)「最後の拠り所」の中を垣間見せてもらった気がする。同僚の検事たちも人情を解する人たちだったと信じたい。
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