2017年4月18日火曜日

「最後の拠り所」

刑務所を出所しても生活は成り立たず、再び犯罪にはしる高齢者が多いという。今朝のNHKニュースで二十歳から始まり服役11回を数え出所した老人のケースを取り挙げていた。途中から見たのか (  それが思い出せない!) 、10回まで何の罪を犯したのか思い出せないが、警察も市役所も明日以後の生活相談に乗ってくれない。下関駅で夜を過ごそうとしたが深夜には閉鎖するので追い出され、ついに放火して同駅を全焼させたという。出所後一年の現在はちょっとした仕事に就いてやっと小さな幸せを掴んだようだ。この老人にこれまで選択肢は果たしてあったのかと番組は問うていた。

高齢の犯罪者にはわざと無銭飲食をするなどして刑務所入りする者が少なくないという。「木枯らしが吹くと舞い戻ってくる人々がいる。『検事さん、私も年でね。できたら南の方の刑務所をおねがいしますよ』............。雇ってくれる人もない。生活保護を求める手段も知らない。こうした人々にとって、刑務所は、飢えと寒さと世間の風から守ってくれる最後の拠り所だった」。『日本経済新聞』の火曜日の夕刊のコラムに半年間 ( 2015年1月~6月 )、25回のエッセーを寄せた元検事総長は私の短い高校教師時代の教え子である。読んだと声をかけてくれる知人は多くても、本気で書いた宗教や社会時評への言及ではなく「人情話」への評が多かったということだが、同君の謙遜と照れ隠しだろう。生徒の頃の抜群のスピーチの才能が今は文筆の才に姿を変えている。見聞したことのない ( むろん正式入所したこともない!)「最後の拠り所」の中を垣間見せてもらった気がする。同僚の検事たちも人情を解する人たちだったと信じたい。

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