中国政府や韓国メディアが自国への言及が欠けていると不満なのは相変わらずで驚くに当たらない。しかし、それを後押しするようにわが国の新聞が、「歴史認識は明示せず」「『戦後』は終わらない」( 朝日 )、「中韓 批判相次ぐ」「『お詫び』『反省』触れず」( 毎日 )、「露中韓とは懸案残る」( 読売 )と、強弱の差はあるにせよアジア諸国や歴史認識へのと言及が無いと安倍演説に不満を示しているのはいただけない。中国は南京訪問を望んでいるが、村山首相と小泉首相がそれぞれ日中戦争発端の地である柳条湖と盧溝橋を訪問している ( 日米間の真珠湾に当たる )事実には口をつぐんでいる。日本のメディアが両首相の両地訪問の際、米国への言及が無いと指摘したとは聞かない。
一部の日本人が南京虐殺を否定するのは大きな誤りであるが、現地の展示館が犠牲者数を何倍にも誇張している限りだれが日本国首相でも行くべきではない ( 行けば数字を認めたことになろう )。大都市で戦闘が交わされれば住民に多大な被害が想定されるので、すでに国際法では「非防備都市宣言」が規定されていた ( 1940年、パリはその宣言のおかげでひとまず破壊を免れた ) が、蒋介石総統も南京防衛軍司令官も日本軍や在住外国人代表の無血開城の要求に頑として応じなかった。外国人代表のドイツ人ジョン・ラーベは「とにかくここはアジアなのだ!」と嘆く他なかった ( ジョン・ラーベ 『南京の真実』 講談社 1997 )。(彼の母国が間もなく数百万人のユダヤ人を殺したのは皮肉であるが )。
以前ソウルを訪問したとき私は「三・一独立運動」発祥の地タプコル公園 ( 当時はパゴダ公園 )に足を運んだ。案内役の韓国人教授に日本の外相は最初の訪韓時にここに来て敬意を表すべきだと話したが、教授は黙っていた。翌日、昨日の自由行動日にどこを見たかと現地ガイドに聞かれたのでパゴダ公園と答えると、「えー。以前、日本の政治家が訪問したとき、韓国人が猛烈に怒った場所なのに」と呆れられた。日本人は「三・一独立運動」に敬意を表してはいけないとは.........。長年日韓交流に尽くしている友人にこの経験を話したが苦笑しただけだった。そんな程度のことでガッカリするようでは日韓交流など出来ないということか。
中国共産党政権が過去の日本帝国主義打倒を自己正当化に利用する限り、また韓国の政治家やメディアが人気取りの道具として「歴史認識」を持ち出す限り、いちいち対応する必要は無いだろう。日本のメディアの良心派気どりは日中関係と日韓関係を損ねているのではなかろうか。だからと言って昭和天皇がA級戦犯合祀以来取りやめた靖国神社参拝を稲田防衛大臣が行うのは浅慮という他ないが。
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