寒月を見ると必ず思い出す文章がある。徳冨蘆花の『自然と人生』の中の「寒月」と題した湘南の逗子の夜を描いた十行に満たない短文である。
「夜九時、戸を開けば、寒月昼の如し。風は葉もなき萬樹をふるいて、飄々、颯々、霜を含める空明に揺動し、地上の影 木とともに揺動す。..............仰ぎ見れば、高空雲なく、寒光千万里。天風吹いて、海鳴り、山騒ぎ、乾坤皆悲壮の鳴をなす。...........月色霜の如き往還を行く人の屐歯、戞然として金石の響きをなすを聞かずや。...............月は照りに照り、風は彌吹きに吹く。大地吠え、大海哮けり、浩々また浩々たり。」
古風すぎる文章で活字を拾うのに苦心したが、横浜の、みなと未来のタワーマンションに住む旧友はこの月、この風を感じることは稀だろう ( このブログ、つまりは負け惜しみの産物? )。
訂正。前回村木孝蔵としたのは村下孝蔵の誤りでした。『初恋』一曲しか知らないのに無理をした罰!
0 件のコメント:
コメントを投稿