2016年12月28日水曜日

キッシンジャーのトランプ評価

昨日の読売新聞にキッシンジャー元米国務長官との長いインタビューが掲載されている。米中国交回復の実現の尖兵となって世界を驚かせた人にふさわしく、イデオロギーに囚われない現実主義政治家の面目躍如といったところか。

トランプ氏について元国務長官は「傑出した大統領になるまたとない好機で、これを前向きにとらえ彼にはチャンスを与えるべきだ」とする。奇異に感ずる人もあろうが、まだ新政権の政策が明らかになっていない段階では無暗に批判するのが得策ではないということなら理解できる( 希望的観測であっても ) 。トランプの「米国ファースト」主義のもつマイナス面については「国益というものは他国の国益にも配慮しなければ、孤立するだけだ」と釘をさしている。

我が国にとってはトランプの日米同盟への一層の貢献要求は愉快ではない。しかしキッシンジャーは「トランプ氏の対日姿勢にも一理ある」「日米同盟の責任分担はどうあるべきかというのは重要な問いかけだ。.............分担の割合は両国の国力の変化に応じたものでなければならない」と国力低下に苦しむ米国の立場を代弁している。

ロシアとウクライナの対立抗争については列国はウクライナの「独立を尊重し、領土も保全されるべきだが、いかなる軍事同盟へも加えられるべきではない」とNATO加盟には反対する。ロシアによるクリミア併合については「クリミア半島は特殊なケースだ。ウクライナに編入されたのは1954年とごく最近」だと、これを通常の武力的国境変更とは区別すべきだとするのは私も同感である。
オバマ外交でほとんど唯一賛成できないところである。

中国については「いま起きていること ( トランプの反中国的姿勢のこと ) は私の思いと相入れないが、これはトランプ氏の大統領就任前のことだ。まだ最終的な評価をすべきではない」と対中宥和ともとれる発言をしている。やはり米中和解を実現した ( 日本をつんぼ桟敷において ) 自身の過去や、我が国ほどには中国の圧力を感じない米中間の地理的距離がこうした発言を促すのだろうか。日本としてはにわかに同意出来ないところだろう。

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