2016年2月1日月曜日

カサンドラの予言

米国共和党の大統領候補者指名争いは相変わらずトランプ氏が先頭を走っているようだ。トランプ人気の理由は、その発言が粗暴でも本音を貫いていることだろう。米国では人種や性別などで差別的な本音を語ることは政治的正しさ ( political correctness ) に反するとしてタブーとされてきた。しかしヨーロッパの移民問題も同じだが現実に移民難民の犯罪率が高ければ、それが貧困や高い失業率などによる面があるとしても、彼らと職業や居住地などが重なる白人庶民層の反発は高まる。米国では富裕層は高級住宅地や極端な場合ガードマン付き住宅地 guarded area に住み経済力で安全を買うことが出来るが、それも白人庶民層の不満をかき立てる。最終的に民主党候補が大統領選挙で勝つならトランプ氏の共和党内での優位を心配する必要はないのだが、それはまだ確実ではない。

カサンドラの予言という有名な言葉がある。神から予言能力を授かったギリシャのトロイの王女が自国の滅亡を予言するが市民に聞き入れられず予言が成就したとの神話的故事から「不幸の予言」を意味する。誰もが不幸の予言を信じたくないのである。

大衆文学の作家として大成した菊池寛の初期の短編小説群は文学として評価されていると聞く。その一つの『ゼラール中尉』は、第一次世界大戦の開始がドイツ軍の自国攻撃から始まると予言したベルギー軍の将校が、ドイツが中立国ベルギーを攻撃するはずがなく直接独仏国境を越えると考える同僚たちから疎まれる。しかし彼の予言は的中し、ドイツ軍はベルギーに殺到した。だが、彼の予言が成就した時は彼がドイツ軍の砲弾により死を迎えた時だった。中尉はやはり私は正しかったと虫の息で語りながら死ぬ。

私はトランプ氏の勝利をあり得るとも考えるが、カサンドラの予言をするといつかその成就を期待する気持ちが生まれると困るので予言はしない。一方、米国社会の病弊を鋭く批判するサンダース上院議員に共感を覚えるが、彼が最終的に民主党候補となれば本番の大統領選挙での共和党の勝利、つまりはトランプ大統領の出現を生む可能性が強まると考えると................。心配もいい加減にしろ!?

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