2015年12月11日金曜日

報道番組「真珠湾攻撃を検証する」を見て

12月8日の日米開戦記念日のメディアの扱いは8月15日の敗戦記念日の扱いより例年地味だが、今年もその例に漏れなかった。教訓としての重要度は後者に劣らないのに.............。結局私の注意をひいたのはフジテレビの夜のプライムニュースの上記の番組だけだった。

今回の番組のゲストは昭和史研究家の秦郁彦氏と、最近『真珠湾の真実』( 平凡社新書 )を出したジャーナリストの柴山哲也氏元朝日新聞記者  (他に政治学者の三浦璢麗氏)だった。秦氏以外の二人の見解はこれまで目にしたことは無かったが、議論はそれほど対立しなかったし、むしろ一致する部分が多かった。

とりわけ秦氏と柴山氏が同意見だったのはローズベルト米大統領が真珠湾攻撃を予知しながらこれを参戦目的に利用したとの説で、戦後共和党政治家が民主党政権攻撃に利用して ( 歴史修正主義の語源はここだとか ) 以来今日にも追随者は絶えないが、両氏はよくある陰謀史観の一つとしてこれを完全否定した。また、対独参戦を目指していた米政権が日米交渉の決裂を望んでいたとの見解も、米国も東西での両面作戦を望んではいなかったとして両氏とも懐疑的だった。日本側が交渉継続を絶望し開戦を決断した契機として知られるハルノートも原則を述べたもので、日本側が思い詰めるほどのものではなく、交渉を引き延ばして国際情勢の新たな進展を待つべしとの米内元海相の意見が、ドイツ軍のモスクワ攻略失敗の判明 ( 12月8日だった!)を考えれば卓見だったということだった。米国に対する交渉打ち切りの通告がタイピングが予定より遅れ結果として奇襲となったとの通説については、新しい見解 ( 遅れは意図的だったとの )は言及されなかったが、秦氏は一時間や二時間前の通告がそもそも妥当ではなく、交渉打ち切り通告は国際法上の開戦通告とは言えない点で二重の無理があったという。これ以上詳細を伝えることは不可能だが、ともかく冷静な意見交換に終始し、価値のある番組放映となっていた。


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