我が国にとっては不愉快な決定だが、原田義昭なる自民党の国際情報検討委員長の「南京大虐殺、従軍慰安婦の存在をわが国は全く否定しようとしているにもかかわらず」というのは誤解を生む。慰安婦問題はさておき、官房長官は南京虐殺を認めており、決定の経緯が一方的であることや歴史の政治的利用を非難しているのである。
これに対し、松浦晃一郎ユネスコ前事務局長が分担金支払いの停止に強く反対するのは、前職との関係も否めないが妥当なところだろう。米国はパレスチナのユネスコ加盟を理由に分担金支払いを拒否しているし拒否は珍しいことではないが、歴史的事件の資料の遺産指定に同じ態度をとるのは世界の共感を得られまい。
それでも日本人が不愉快に感ずるのは、中国が主張する犠牲者30万人説や東京裁判の20万人説が事実とは思えないからだろう。少し古いが秦郁彦氏の『南京事件』(中公新書 )は約4万人という数字を妥当としている。これは約30年前の研究結果であるが、昨日の東京新聞の「本音コラム」欄で文芸評論家の斎藤美奈子氏は「最近は4万人説が有力らしい」としている。同氏について私はよく知らないが、朝日新聞の書評委員をつとめ、東京新聞でも今回の政府自民党の対応を批判しているので、いわゆる歴史見直し派ではあるまい。
以上とは別に、国連の分担金 ( ユネスコもこれに準ずる ) が米国2割、日本1割で各々1位2位というのは日本人として納得できない。私は我が国の安保理の常任理事国入り要求を必ずしも賛成しない ( 軍事力の提供の用意が国民に果たしてあるのか?)が、旧敵国条項を改正しない国連に五常任理事国より多額の分担金 (米国を除く )を払うのはおかしな話である。
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