たまたま家内が図書館から、二年前に出て話題を呼んだ『野心のすすめ』を借りてきたので私も読んだ。読後感は悪くなかった。先ず「はじめに」で、若い女性タレントがデビューのきっかけを友人が本人に勝手にコンテストに応募したのでとよく言い訳するのは「全部とは言いませんが、ほぼ百パーセント、嘘です」と痛快な断定を下す。前から半信半疑だったがやはり.............。
何といっても彼女の本は美容外科の植毛助手から出発して直木賞作家となり今や同賞を含む幾つもの文学賞の選考委員を兼ねるまでの彼女の体験が土台となっているから自慢話の連続であるのは事実である。しかし彼女はそれを隠しはしない。努力をともなう野心は何ら恥ずかしいことではないから (「少年よ大志を抱け」と「少年よ野心を抱け」とは訳語の違いに過ぎない )。さらに彼女はお金のない未婚女性が将来出世しそうな男性探しに躍起になっても寛大である。逆に、「お金も知名度もある女優さんや歌手が、『干したばかりの家族の洗濯物に顔を埋めている時がいちばん幸せ』などと発言すると、途端に『いい人!』と共感の声が上がるのです」と指摘する。そこに偽善を感じてしまうのは私も同感である。
いつの世でも「いい子」になりたがる人が多いのは仕方が無いことかもしれない。ただ、メディアがいい子ぶりを見抜けないのが情けないということだろう。むろん知っていて調子を合わせているならもっと悪い。世の中で林真理子が貴重な所以である。
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