2015年7月7日火曜日

ギリシャ問題

ギリシャがEUの緊縮政策要求を拒否して両者の対立が深まっている。

チプラス首相がEU諸国に対してギリシャの民主主義を護ると大見得を切っているのはいただけない。EUはギリシャ人が身の丈に合った生活をすべしと要求しているのである。伝え聞くところではギリシャの年金は現役時代の収入の8割を支給するので、早期退職者も多かったとか。事実なら支給率がもっと低いEU諸国を納得させることは難しい。ギリシャの生んだイソップ童話の蟻とキリギリスの例が今のEU諸国と同国にそのまま当てはまるのは皮肉である。そういえばギリシャの古代文明は世界史上の奇蹟と言っても過言ではないが、その民主政治はあっという間に衆愚政治に変わった。歴史は繰り返すのか (今のギリシャ人はその後南下してきたスラブ民族が主体とも聞くが )。

とはいえ先進諸国はこれまで発展途上国の債務を軽減してきた。ギリシャを途上国と考えればそもそもEUに加盟させたのが事件の発端である。さらに独仏の銀行が多額の資金をギリシャに貸し付けたのは経営判断の誤りであったことは否定できない。また、ドイツはユーロ導入によりマルク採用時より有利な交易条件を享受してきた。借りたものを返せは個人間では当然だが、国家間では必ずしもそうではない。

ギリシャ救済が動き出すかはEUとくにその中心のドイツとの交渉の行方にかかっている。ギリシャが非妥協的な財務相を交代させたのは一歩前進だが、首相のポピュリズム的手法は相手国を怒らせるだけで改める必要がある。他方、EU側もある程度の債務軽減に応ずるのが賢明ではないか。

最近我が国ではE.トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)が書評にも取り上げられている。NATO諸国が、味方してはならないウクライナ極右翼に肩入れしたとの見解はわたしもまったく同感だが、ウクライナの反露姿勢の背後にドイツがいるというのは疑問があるし、我が国の多くのロシア問題研究家の見解とは逆である。ドイツが地続きの東欧諸国の安価な労働力を利用し、それができないフランスに差をつけていることへの苛立ちがトッドの見方に反映しているのだろうか。それにしても邦語の題名はどうかと思う (既刊書の邦訳ではないので原題名はない )。




0 件のコメント:

コメントを投稿