2022年6月10日金曜日

訂正 

 前回に「悪評ぷんぷん」とあるのは「悪評ふんぷん」の誤り。打ち間違え!

2022年6月9日木曜日

ウクライナ・ロシア間の早期停戦は両国の利益なのだが...........

 ウクライナではロシア軍が苦戦しながらも占領地を広げつつあるようだ。ロシアも今ではウクライナ全土の占領は不可能と覚っただろうからアゾフ海沿岸とクリミア半島確保で停戦に応ずるだろうが、ウクライナのゼレンスキー大統領がそれに応ずるだろうか。戦争は長期化で犠牲が拡大するほど停戦受諾は困難になるだろう。

 かつて君主国間の争いは国民の意思を顧慮することなく君主の意思で開始され終了した。しかし、第一次大戦中、英米を中心に「秘密外交の廃止」が叫ばれるに至り、停戦決定も講和条約の確定も容易ではなくなった。ヴェルサイユ条約のもとで敗戦国ドイツに要求された巨額の賠償金は「天文学的数字」と評され悪評ぷんぷんだが、米国の交渉団の一人は「全額回収が可能などと考えた者は一人もいなかった」と回想している。しかし、戦勝国民の怒りを鎮めるためにはとりあえず巨額を要求せざるを得なかったのである。それがやがてヒトラーの台頭を生んでも........。

 6月4日の『毎日』のコラム「オピニオン」欄に同紙の論説委員の伊藤智永氏は、「インターネット上ではウクライナ軍の戦争犯罪も確認されている。まして米国の異常な兵器の供給ぶりを見ると、ウクライナが米露代理戦争に命と国土を提供している実態は誰の目にも明らかではないか」と書いている。それも真実の一面ではあろう。ロシア兵にとっても戦争の実情は大きくは変わらないだろう。

 冷戦終了後、NATOの加盟国は15ヵ国から30ヵ国に増加し、ウクライナが加盟すれば31ヵ国目だった。これがアイスランドのレイキャビークとマルタ島でレーガンとゴルバチョフが握手したとき思い描いた世界だったろうか。ウクライナは憲法にNATO加盟をうたっていたと聞く。同国には第二次大戦後に中立国を選んだオーストリアを見習って欲しかった。

 それでも物事には両面があるフィンランドのNATO加盟はロシアに取り許し難いと映るだろう。しかし、ウクライナ軍の勇戦はロシアにフィンランド攻撃を躊躇させる効果を生むだろう。

2022年6月4日土曜日

「国恥地図」の示すもの

  昨夜のTBSの『報道1930』は「国恥地図が秘めた中国 '' 失われた帝国 ’’  習氏国家観の原点」と題され、中華民国初期つまり蒋介石政府が流布させた「国恥地図」と題された地図が主題。東アジアは日本やフィリピンといった島国を除いて、北は旧満州のさらに北のロシア極東地方から、南はインドシナ半島、西は西域諸国まで赤い曲線で囲まれた「中国」地図であった。中国が最大版図を誇った清国時代から後に失われた地域はすべて回復されるべき旧領土なのであり、習近平の「中国民族の偉大な復興」の中身は共産主義中国の独創ではなかった。それが中華思想というものか。近代の「国民国家」とは全く異質な国家観と言うほかない。

 我が国はこれまで文化的には中国の深い影響を受けてきたが、幸い海で隔てられ政治的には独立を保ってきた。しかし数年前、習近平が太平洋は米中二国を容れるに十分な広さがあると語ったと報ぜられた。ソロモン諸島など太平洋の島嶼国家群への中国の接近は、太平洋の東半分が米国の勢力圏なら西半分は中国の勢力圏であっても当然と考えた結果なのか。

 

2022年6月1日水曜日

理想主義者の陥る罠

  ロシアのウクライナ侵攻に関してロシア国民の政府支持は目立って減少していない。政府のプロパガンダに国民が「騙されている」との解釈は必ずしも正しくないことをロシア史専門の池田嘉郎氏が主張しているとのインタビュー記事(『朝日』5月30日夕刊)が伝えている。私も同感である。

 池田氏がソ連崩壊の1991年秋にモスクワで会った人の多くは「生活が苦しくなった」「老後が不安だ」と訴え、「昔のソ連へのノスタルジーを語り続け」たという。プーチンは彼らに救世主と映ったのである。池田氏は続けて「プーチンの台頭期と1917年ロシア革命におけるボルシェビキ(後の共産党)の権力奪取には共通点があります。社会の無秩序化で最も痛めつけられた『普通の人』こそが、社会に安定と規律をもたらすためには家父長的な強い権力が必要だと考え、それを求める点です」と指摘される。

 1917年と1990年代の共通性の指摘にも全く同感である。それはロシアの立憲民主派のひ弱さである。1917年3月にロシアで帝政が倒れ民主派が政権に就いたが、同年11月のボルシェビキの政権奪取までは大混乱期だった。従来は民主派が西欧との連帯を重視して大戦継続を追求したことが彼らの没落の理由として強調された。しかし、彼らが犯罪を厳しく取り締まらなかったため首都は犯罪者の天国となり、民衆がボルシェビキの剛腕に期待したことを重視する研究が30年前に発表されている(長谷川毅『ロシア革命下ペトログラードの市民生活』中公新書 1989)。1989年当時も経済の大混乱とともに治安が悪化した。今は亡き同年輩の知人でロシア史研究者のIさんは当時モスクワの街頭でギャングにホールドアップさせられた。1917年も1989年も西欧流の民主主義はロシアでは大衆に見放されたのである。その理想がどれほど高貴でも。

2022年5月26日木曜日

観光産業の競争力1位の日本

  新聞やテレビに世界の観光産業のベストテンが発表されており、日本は初めて?1位となっている。昔人間には考えられない日本の躍進である。2位のアメリカはニューヨークをはじめグランドキャニオンやナイヤガラ瀑布やイエローストーン公園などスケールの大きさで人を驚かす観光地が少なくないし、10位にも入らない中国も万里の長城のような人工物以外にも西部にはヒマラヤに連なる5000メートル級の山々(ヒマラヤは中国領に数えたくない)や長江上流部の激流など見所は多い。

 それに対しかつて観光王国だった西欧諸国はスペイン3位、フランス4位、ドイツ5位、スイス6位、などはそれなりに頑張っているが、英国8位など昔日の面影はなく、イタリアに至っては都市国家シンガポール9位に続く10位(他にオーストラリアが7位)。この結果を知ったら日本のカジノ誘致派はそれ見たことかと勢いづけられるのではないか!

 日本が1位となったのは、以前にも言及した気がするが狭い国土に観光名所が集まっているからではないか。何年か前高尾山がミシュランガイドに載ったと聞くが、先進国の首都で都心から1時間余りで600メートルの山に達する国は珍しいだろう。

 料理なども含めた日本文化や治安の良さや物価安で我が国が認められてきたとすればよろこばしいが、文化というなら中国はどうか。私はかつて紹興の町で会稽山公園という看板を見かけ、呉越2国の争いにちなむ「会稽の恥をすすぐ」、「臥薪嘗胆」、「呉越同舟」などのことわざの起源はここかと妙に感じ入ったことがある。それなのに圏外とは欧米から見ると中国はまだまだ未知の国なのか?

2022年5月22日日曜日

敗者への待遇

  ウクライナのマリウポリが陥落した。捕虜となったウクライナ兵の数は諸説あるが千人を超えるようだ。ウクライナ側はロシア兵の捕虜との交換を要求しているようだが、ロシア兵の捕虜がそれほど多いとは思えない。それに加えて「アゾフ大隊」と呼ばれる内務省配下の部隊はロシア側がネオナチ呼ばわりする集団であり、ロシア側の苛烈な報復にさらされる事態が危惧される。

 そもそもロシアは帝政時代から少数民族に移住を強いたりしたようだが、第二次世界大戦中にクリミア半島を占領したドイツ軍に協力したとの理由で原住民のタタール人をシベリアに追放した事実は知られている(ソ連崩壊後に帰国)。 旧日本兵がシベリアや中央アジアに不法抑留されたことは日本人の知るところである。

 戦前や戦中の学校教育を受けた日本人なら、「旅順開城約成りて」に始まる唱歌『水師営の会見』を私を含めて全曲暗唱するものは稀ではないのでは。旅順要塞の降伏式典で敵将ステッセルに乃木将軍が特別に帯剣を許して厚遇しロシア軍の善戦を讃えたばかりか、のちロシア皇帝が死刑を命じたステッセルの助命を嘆願し認められたことは世界で賞賛された。現在の中国が同じ評価とは思えないが、会見所は立派に保存されていた。歌詞の中でステッセルが愛馬を乃木将軍に託したとあるが、年若い中国人ガイドは降伏すれば全資材は没収されるのが当然で、無意味だと注釈を加えた。なにぶん現在の旅順要塞にはあちこちに「国恥記念」の看板が立っていた。

 そのうちに水師営の会見など知らず関心もない邦人観光客が大多数になるだろう。その時に何か新しい話題をが必要になるだろうと思って宇田博の『北帰行』の歌詞とその由来をガイドに教えておいた。それを生かすかは彼しだいだが........。

 

2022年5月19日木曜日

北欧へのNATOの拡大は賢明か

 ロシアのウクライナ侵攻にうながされてフィンランドが70年ぶり、スウェーデンが200年ぶりに中立の立場を捨てNATO加盟を希望している。昨夕のどこかの局のニュース番組を見ていたら人口65万人の首都ヘルシンキは90万人分の地下シェルターを備えるという。スウェーデンは全人口の8割分の地下シェルターを備えるとか。永世中立国と誰もが知っているスイスでも、観光都市ルツェルンは市の人口以上の地下シェルターを備えると読んだ記憶がある。

 生活様式や居住形態の違いも影響しているとは思うが、我が国で地下シェルターを備えた家など大都市でも1割も無いだろう。最近我が国で仮想敵国のミサイルに対抗して敵基地攻撃野力を保有すべきとの議論が始まったが、反対論が強いようだ。しかし、反対論者も地下シェルターが周辺国を刺激するとまでは言えないはず。結局のところ日本人は困難を直視したがらない国民のようだ。

 フィンランドとスウェーデンが早急なNATO加盟を目指しているのはウクライナ侵攻でロシアにも余力がなくいまが好機と捉えているのだろうが、それでは冷戦時代の二大陣営の対立の再現となろう。米ソ冷戦時代のNATOの功績は多大だった。当時ソ連は口先では「革命の輸出」は目指さないとしていたが、共産主義を世界に拡大することを歴史的使命としていた。一方、現在のロシアが求めているのは大国の地位の承認(と安全)であって世界の共産化ではない。

 NATO加盟にはメンバーの一国でも反対すれば認められず、今のところトルコは反対を唱えている。現在のトルコのエルドアン政権は強権的で私は強い反発を抱いているが、この問題ではトルコの拒否権行使を期待したくなる。

 訂正  前々回に「壁際の魔術師」と書いたが「塀際の魔術師」の誤り。悪しからず。