ウクライナではロシア軍が苦戦しながらも占領地を広げつつあるようだ。ロシアも今ではウクライナ全土の占領は不可能と覚っただろうからアゾフ海沿岸とクリミア半島確保で停戦に応ずるだろうが、ウクライナのゼレンスキー大統領がそれに応ずるだろうか。戦争は長期化で犠牲が拡大するほど停戦受諾は困難になるだろう。
かつて君主国間の争いは国民の意思を顧慮することなく君主の意思で開始され終了した。しかし、第一次大戦中、英米を中心に「秘密外交の廃止」が叫ばれるに至り、停戦決定も講和条約の確定も容易ではなくなった。ヴェルサイユ条約のもとで敗戦国ドイツに要求された巨額の賠償金は「天文学的数字」と評され悪評ぷんぷんだが、米国の交渉団の一人は「全額回収が可能などと考えた者は一人もいなかった」と回想している。しかし、戦勝国民の怒りを鎮めるためにはとりあえず巨額を要求せざるを得なかったのである。それがやがてヒトラーの台頭を生んでも........。
6月4日の『毎日』のコラム「オピニオン」欄に同紙の論説委員の伊藤智永氏は、「インターネット上ではウクライナ軍の戦争犯罪も確認されている。まして米国の異常な兵器の供給ぶりを見ると、ウクライナが米露代理戦争に命と国土を提供している実態は誰の目にも明らかではないか」と書いている。それも真実の一面ではあろう。ロシア兵にとっても戦争の実情は大きくは変わらないだろう。
冷戦終了後、NATOの加盟国は15ヵ国から30ヵ国に増加し、ウクライナが加盟すれば31ヵ国目だった。これがアイスランドのレイキャビークとマルタ島でレーガンとゴルバチョフが握手したとき思い描いた世界だったろうか。ウクライナは憲法にNATO加盟をうたっていたと聞く。同国には第二次大戦後に中立国を選んだオーストリアを見習って欲しかった。
それでも物事には両面があるフィンランドのNATO加盟はロシアに取り許し難いと映るだろう。しかし、ウクライナ軍の勇戦はロシアにフィンランド攻撃を躊躇させる効果を生むだろう。
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