NHKテレビのドキュメンタリー番組『映像の世紀』を欠かさずでもないが見ることも少なくない。選挙報道に食傷し(すでに不在者投票)、7月8日に放映された「東京 戦後ゼロ年」を今ごろ見た。終戦直後の東京の「惨状」としか言いようのない記録で、上野駅?に住む孤児たちや闇市、パンパン(米兵相手の売春婦)などなど。あらためて圧倒された。父の転勤で一年前に地方に移っていた私には旧知の知識でもやはり衝撃的だった。
松本清張には『砂の器』など汚辱に満ちた過去を隠すため他人を殺してしまう作品が少なくないようだが、『ゼロの焦点』も前者に次いで有名で、のちに再映画化もされた。久我美子扮する主人公は金沢の営業所長を務め最近本社に勤務することになった男性と見合い結婚するが、残務整理のためとして夫は結婚8日の後に金沢に出張し行方不明になる。真相究明を依頼された夫の兄は、元パンパンで今は地方の名流夫人と戦後の一時期に風紀取締の警官だった夫とは旧知の仲だったと突き止めるが何者かに毒殺される。久我扮する主人公は名流夫人と名勝の能登金剛で対決し、相手を投身自殺に追い込む。
前の戦争は310万人の直接犠牲者の他にも多くの人を悲惨な運命に陥れた。大学の研修旅行の付き添いで訪れた能登金剛の「ヤセの断崖」には清張の歌碑「雲たれてひとりたけれる荒波を かなしと思えり能登の初旅」がある。私の場合、訪問は晩春だったが、一瞬で厳冬の能登に引き戻される想いだった。
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