たいへん大袈裟な題を付けたが、昭和一桁生まれで日米戦争中に小学生であった者には此の問題に全く無関心ではいられない。とは言っても最近公刊された田島道治初代宮内庁長官の全7巻の『昭和天皇拝謁記』を読むほどの熱意も根気もない。
ところが今年8月、20世紀後半生まれの7人の若手研究者たちによる『昭和天皇拝謁記を読む』が刊行されたので入手して読んでいる。しかし、一巻全4部のうち天皇の前大戦観を扱ったのは第1部だけ(「天皇は戦争をどう認識していたか」)。残る3部は戦後の「象徴天皇制」への昭和天皇の対応などでやや失望した。
第一部の「天皇は戦争をどう認識していたか」も戦前の昭和天皇の心の葛藤を十分に理解しているか疑問に思った。私は明治憲法上の天皇の地位や権限を詳しく知るわけではない。しかし、絶対王政時代の君主ではなかったとは考える。英国の君主政を理解し、訪英中にジョージ5世(名君と言われる)から直接に君主の道を説かれた昭和天皇にとって対米英戦争が不本意そのものだったろう。それでも宣戦の詔書を発した以上むろんその責任は免られない。しかし、戦後のマッカーサーとの会見で開戦の全責任を負うと語り、元帥の天皇への深い敬意を生んだ。
日米開戦の直前に昭和天皇とルーズベルト米大統領のハワイ会談が計画された。グルー駐日米国大使はその回想録『滞日十年』で述べたように本国政府に対し会談の実現を悲痛なほどの調子で訴えた。彼は日本の上層部が日米開戦を望んでいないことを知っており、さらにこれが最後の機会であることを知っていた。しかし、ヨーロッパでの対独戦参加を重視した米国政府は此の要請を顧みなかった。米国自身が此の選択で大きな犠牲を払うことになる。
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