10日ほど前に知人から訳書をいただいた。東ドイツのある家族の100年近い家族史を同家の一員が纏めたもの(マクシム・レオ『東ドイツ ある家族の歴史』アルファベータブックス)。同国はヨーロッパでも最も激しい変化を経験した国と言ってよい。したがってドイツ史については我が国では膨大な研究の蓄積があるが、渦中で生きた一家族の歴史を通して下から照射し直す家族史の成果は如何?
父方のユダヤ系家族と母方のアーリア系!ドイツ人の家族の歴史は10人余りの人物の名前を家族図で幾度となく確認しながらの作業の繰り返しで、投げ出したくなった。わずかに、戦後のベルリンでは街路樹は市民により燃料として利用され、無くなっていたとの記述には驚かされた。じつは戦時中の世田谷区の我が家でも、庭の桜の木を切り倒して風呂を焚いたから。
しかし、ナチスの信奉者となった母方の家族と、ユダヤ人ゆえに追放されフランスに亡命し、フランス共産党系のレジスタンスに参加して活躍し、その縁で東ドイツの準高官となった父方の家族との波乱に富んだ家族史は、同じく戦争に翻弄されたとはいえ一体となって戦争中を生きた日本人との差は大きい。後半で東ドイツの諸相をどう評価するのか、期待したい。
0 件のコメント:
コメントを投稿