高校の世界史の授業で必ず習う名辞に英国の思想家ホッブズの「万人の万人に対する闘争」がある。似た言葉に「homo homini lupus 人は人に対し狼」があり、私は長年ホッブズの言葉と記憶していたが、ローマの喜劇詩人の言葉と最近知った。語義は説明不要だろう。人類はそうした自然状態を脱するため社会契約を結ぶ。
昨日の毎日新聞の書評ページにマシュ・ヘトリンクという著者の『リバタリアンが社会実験してみた町の話』の小川さやか氏の書評が載っていた( 私は原著を読んでいない)。 それによると米国のニューハンプシャー州のグラフトンという町に最近多数のリバタリアン(絶対自由主義者)が移住してきた。あらゆる束縛を否定する彼らは賭博の権利、麻薬売買の権利、決闘する権利などを主張する。なかでも問題なのはこの町に多数出没する熊たちへの対策(本書の原題は『リバタリアン 熊に遭う』とか)。家畜や猫を襲う熊たちへの対策として、「生ごみなどの管理や土地区画規制に従うのも、熊対策に税を払うのも嫌う彼ら.......。銃をぶっ放す権利対熊にせっせと餌やりをする動物愛護者もいる」。
戦後間もなく岩波新書に池田潔慶大教授の『自由と規律』が発表され、英国の名門パブリックスクールの厳しい規律が紹介され、自由主義の母国とばかり思っていた英国の教育が驚きをもって迎えられた。自由と規律は両立不可能ではない。
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