ウクライナ国の西欧への傾斜、とりわけNATO(北大西洋条約機構)への加盟希望をめぐってNATO諸国(米国を含む)とロシアの対立が際立っている。独立国の方針はその国民が決めることではあるが、その方針が賢明かどうかは全く別の問題である。私にはウクライナのNATO加盟は最も望ましくないと映る。
現在の西側諸国とロシアの対立を、8年前のウクライナ領クリミア併合に続く一連のロシアの領土的野心の発露と見る見方は妥当でない。ロシアがクリミア半島を獲得したのは遅くとも18世紀後半の女帝エカテリーナ2世の時代であり、その後も一貫してロシア領だった。ソ連時代にフルシチョフ共産党書記長がクリミアをウクライナに所属替え?した真意は明らかではないが、移管後、ソ連解体によりウクライナとロシアが別の国になるとは誰も当時は考えなかった。
30余年前のソ連の解体に伴いNATOに対抗してソ連が創設したワルシャワ条約機構も消滅した。本来ならソ連の侵略を防止するため創設されたNATOも同様に消滅すべきだったが、ポーランドやバルト三国など帝政時代からロシアに支配された国々の猜疑心は西側諸国も考慮せざるを得ず、東欧諸国の多くがNATOに加盟を希望し認められた。しかし、ロシアと長大な国境で接しロシアが帝政時代から自国の一部と見做したウクライナのNATO加盟はあまりにもロシアを蔑ろにする行為で、同国の西側諸国への猜疑心を肥大化させる。ロシアをそこまで軽視すべきではない。これはロシアの内政(強権的体質)とは分けて考えるべきである。
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