昨日の夕刊(『朝日』)の第一面に、「放置自転車 職人がアシスト」との見出しで、国内で撤去される放置自転車年間100万台超の再生の試みが紹介されている。自転車の価値がそれほど低下しているとは............。
またまた古い話になるが、 戦争直後のイタリア映画はネオ・リアリスモと総称される一群の作品を生み、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』やヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』は一世を風靡した。なかでも後者は、仕事に必要な自転車を盗まれた主人公が追い詰められた挙句、他人の自転車をぬすむが、幼い息子の面前で警官に逮捕されるという衝撃的な映画だった。
それ以後わたしはデ・シーカ監督のファンとなり、『ミラノの奇蹟』(1951)、『終着駅』(1953)、『ひまわり』(1970)などの作品を見たし、1966年の最初の大陸旅行で映画の舞台となったミラノの大聖堂( ドゥオーモ)の屋根を歩いた。
その後のイタリア映画はフェデリコ・フェリーニ監督の難解で独りよがりの?映画が主流になった。そうした傾向に対して映画は大衆に理解されるものであるべきだと考えたデ・シーカの『ひまわり』は、第二次世界大戦に翻弄されたイタリア人夫婦の物語で、ヨーロッパ現代史を教える私にはヘンリー・マンシーニ作の主題曲とともに忘れられない映画となった。
放置自転車の話題から大きく外れてしまったが、自転車を粗末に扱う人たちに生活のため一台の自転車を盗んだ時代のことを知ってほしいとの願いは、お節介と思われても失いたくない。
0 件のコメント:
コメントを投稿